昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

一色まこと『ピアノの森』その3

この作品はカイがピアノと出会い、本来の持ち主
阿字野先生の指導を受けてピアニストへの
道を拓くお話ですが、

同時に25年前の事故で婚約者と左手の自由を
失った元天才ピアニスト・阿字野壮介の再生の
物語でもあります。

序盤、森脇小学校で音楽教師をしていた頃は
陰気で怖い先生と思われていていました。

それを知った彼のファンだった雨宮母が、
修平とカイに阿字野先生の過去を教えてくれます。

雨宮母は阿字野先生に、修平のピアノの
師になってくれるよう奔走しますが断られます。

結果的に彼女と修平の言動が、阿字野先生と
カイが近づく後押しになっています。

実はカイを育んだ「森に捨てられていたピアノ」の
本来の持ち主が阿字野でした。

処分した後、ふと行方が気になった阿字野が
それを見つけたことが、近くの森脇小学校の
音楽教師となった理由でした。

(そんな事情でも子供たちに教えるためにと
「茶色の小瓶」アレンジ曲を作る先生は優しい……)

5年後、留学先から一時帰国した修平がカイに
会いに来るエピソードで、若き日の阿字野先生の
コンサートのビデオを持ってきます。

その映像を見ながらカイが
(これほどの腕を持っていて……それを失って……
耐えられるものなのか!)
と、阿字野先生を改めて尊敬し、映像に合わせて
一緒にピアノを弾くシーンがあります。

後にこのシーンを再現するかのように
復帰した阿字野先生と向い合せにピアノを
弾く日が来るなんて、思いもよりませんでした。

医学の発達で25年前には不可能だった手術が
可能になり、ケガは治ったもののリハビリが
うまくいかなかったりと、リアルタイムの読者は
ハラハラし通しでした……。

しかし、ラストはもう……この漫画に出会えて
良かった!!!!感無量!!ってなります。

若い主人公が栄光を掴んでハッピーエンドではなく、
彼をそこへ送り出した、かつて全てを失った師匠が
今度はライバルとして再起するところまで描くからこそ
この物語はより素晴らしいのかもしれませんね。

ピアノの森(26) (モーニングコミックス)

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