昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

曽田正人『め組の大吾』その1

め組の大吾(95~)は新米消防士・
朝比奈大吾がめだかヶ浜署に配属され、

時にやる気が空回りしつつも、持ち前の
野生のカンと行動力で人を救い、レスキュー隊を
経て、世界でも有名なヒーローになるまでを
描いた名作です。

04年にはTVドラマ化されました。

序盤、大吾は配属先の「出動がない、めでたい“め組”」
という評判と、いつもやる気のなさそうな
消防長・五味さんたち職員に失望していますが

実は五味さんこそ、幼い頃の大吾を救った
ヒーローだったこと、

火事が出ないのは五味さん以下、めだかヶ浜署の
人達が町内を見回り、人々と交流することで
火災を未然に防いでいたことを知ります。

要救助者を抱えたまま腰を抜かしたり、
消化栓を巡ってよその職員と火花を散らしたりと

初期は消防士なら一度は体験してそうなエピソード
でしたが、次第に映画のような「九死に一生
レベルのトラブルに立ち会うことに……。

読んでるだけでゾワゾワがとまらない
臨場感あふれる災害現場の描かれ方、

どんな絶望的状況でも必ず助け出す大吾のド根性は
何度読んでも素晴らしい……!!!

しかし一人の死者も出していないとはいえ、
カン頼りで、マニュアルも常識も蹴飛ばす
大吾のやり方は軋轢を生みます。

本人は無意識に最適解を引き当てているのですが
周囲からしたら正気の沙汰じゃない。

あちこちで殴られたり批判されつつも

何とか穏便に済んでいるのは五味さんの人望や
周りのフォローがあってこそ。

(あと大吾の「親父キラー」能力だと
友人が言ってました)

なお曽田作品に繰り返し出てくる
「天才の前に大勢の凡人が足元に倒れ伏す」
シチュエーションは

レスキュー試験最後の課題・1500m走。

消防士の若き精鋭たちが、1・5キロ走っただけで
屍累々になるあの場面によく現れています。

試験官「彼らにとっちゃ、きさま……
悪魔のような奴だよ!!

悪魔のような……スゴイ奴だ!!!」

ぜひ読んでこのセリフを実感してください!!

語り切れないのでまた次回。

 

『動物戦隊ジュウオウジャー』その2 門藤操

ジュウオウジャー対策として
ラスボスのジニスは秘書のナリアに命じ、
ジューマンと人間の男を捕えさせます。

そしてオオカミ、サイ、ワニのジューマン
三人の力を、一人の人間・門藤操
(もんどう みさお)に注ぎ込んで作られた
強敵「ザワールド」が誕生。

「レベルが違うんだよ!」の決めセリフで登場し、
圧倒的な強さでジュウオウジャーたちをなぎ払い
一度は心を折られるほどでした。

しかし洗脳されていただけだったので
六人目の戦士「ジュウオウザワールド」として
味方になってくれます。

「追加戦士は味方になると弱体化する」
これはスーパー戦隊のお約束ですが

彼の場合、仕方ない理由がありました。

とっても豆腐メンタルなのです。

門藤操、通称「みっちゃん」

強くて心優しく、手先も器用で
調子がいい時はすごく頼もしい

しかし性格は不器用でコミュ障、
一度凹むと体育座りでうずくまる
面倒くさいキャラ。

人との距離感もおかしいため
いい奴なのに友達がいなかったらしく

皆でパンケーキ作るとか、ちょっとしたことで
大いに感激します。

本音を表に引き出す能力を持つ怪人が現れた際
人格者の大和すらみっちゃんを
「ちょっとめんどくさい」と思ってたことが発覚。

よかった……大和も悟った聖人君子じゃなくて
ちゃんと人間らしさがあった……と安心しました。

自分の能力はジューマン3人を犠牲にした
ものだと罪の意識を抱いており、

「オレに○○する資格はない……」と
常に自虐的なのですが

話が進むにつれて成長し、
「落ち込んでいる資格なんかない!」と
恐怖の対象であるジニス(実は偽物)に必死に
立ち向かう姿に泣けました。

最終回後のVシネマ『帰ってきた動物戦隊
ジュウオウジャー』ではジューマンの
彼女ができましたが

「みっちゃんの強さだけでなく、弱さも
愛してくれますか!?」と 何故か母親の気分で
彼女に訊きたくなりました。

めんどくさい性格だけど、観ているうちに
可愛くてたまらなくなる、それがみっちゃんです。

他のキャラはまたそのうちに。

 

 

 

冨樫義博『レベルE』

『レベルE』(レベルイー 95~)
「宇宙一優秀で危険なドグラ星のバカ王子」を
中心に、山形を舞台に起きる宇宙人がらみの
騒動を描いたオムニバスです。

11年にはアニメ化されました。

第一話は高校生・筒井雪隆が一人暮らしの
ために引っ越してきたマンションに、

自称宇宙人の謎の青年が住んでいた
ところから始まります。

当初は雪隆が主人公なのかと思ったら
謎の青年こと、バカ王子が狂言回しとして
だいたいの話に登場します。

フルネームはバカ=キ=エル・ドグラ。
第一王子なので次期国王ですが

「ぼくはホラを吹く時は
常に命がけの覚悟で臨んでいる」

と、優秀な頭脳を悪ふざけのために
使う厄介極まりない人物。

よくネットで使われる「予想の斜め上」という
言葉の元ネタでもあります。

正確には
「あいつの場合に限って
常に最悪のケースを想定しろ

奴は必ずその少し斜め上を行く!!」

常にそれに振り回される、護衛の
クラフト隊長が不憫でならない……。

ブラックユーモアとひねりの効いた
ショートショートみたいな話が多いので
あらすじは詳しく解説しませんが

登場人物や設定の名前を見れば
作品の傾向は良くわかるかと思います。

「筒井(道隆)」「ドグラ・マグラ(星)」
「江戸川(乱歩)」「コリン(ウィルソン)」
「サド」「(ラヴ)クラフト」……。

これらを本棚に並べてる人は知的で
人を喰った言動が好きなひねくれ者の傾向。
(だいたい合ってるはず)

個人的に好きなのは、バカ王子が小学生5人に
変身アイテムを渡して使わせる
「原色戦隊カラーレンジャー」編

RPGと人魚の二つのお話がありますが
特に人魚の話はおススメです。

あとバカ王子結婚編。

まんまと罠にかかったのは何故かって
たまに論争になってますが決まってる。

惚れちゃったからだよ!!

実はいつの間にか、地球は宇宙人が
当たり前のように大勢溶け込んでいる……
というのは『幽白』ラストを彷彿とさせます。

色んな意味でHUNTER×HUNTERの原型っぽい
作品ですね。文章量とか凝りまくった設定とか。

 

レベルE 下 (ジャンプコミックスDIGITAL)
 

 

岡田あーみん『お父さんは心配症』

お父さんは心配症(84~)
心配しすぎて娘の典子と彼氏の北野くんを
振り回す暴走お父さん、佐々木光太郎が
主人公のドタバタギャグ漫画です。

94年には実写TVドラマ化しました。

母親は早くに亡くなっており
年頃になった娘が心配なのはわかりますが

心配性を通り越して、超展開すぎる
方向に妄想がイってしまい、
理解不能の言動で突っ走ります。

はた迷惑な人ですが、典子への愛は
本物なのは確かです。

お父さんだけでなく、次々に奇人変人の
濃いキャラが登場し、

テンポよくボケまくりやりたい放題で
ツッコミが追いつかない勢い。

特にタラコ唇が特徴のサッカー部の片桐
キャプテンとその両親とじい、

一見ダンディな緒方さんと娘のひろみ。

病弱を通り越して、もはやホラーな寝棺さんと
リーゼントの息子・一郎。

そして北野くん……序盤はまともな
人だったのに(遠い目)

最後まで常識人だった典子が一番の
変態と言われてましたが、
ツッコミ役必要だから……。

 

個人的に6巻、テレビに出ることになった
お父さんが暴走、番組を台無しにするエピソードで

怒ったテレビ局スタッフに追われるうちに
別の放送局に乱入、

アナウンサーに背負われながら逃亡中に
車にはねられ

アナ「り……臨時ニュースを申し上げます。
今日午後9時15分MHK放送局の前で
わたしがひかれました」

「そ……その瞬間 わたしは目の前が
まっくらになり なすすべもなく
宙を舞い……

地面にたたきつけられて
あらやだよ このザマでさぁ」

途中まで冷静に実況しながら
最後は投げやりなアナウンサーに
声出して笑いました。

パロディも多く『バロム1』の
ヤゴゲルゲの子守歌や

ちあきなおみの『喝采

フォーリーブスの「にっちもさっちも
どうにもブルドッグ♪」を知ったのは
このマンガでした。

あと2巻の「更年期障害連合」が
すごくツボです。

お父さんに日記読まれて典子が怒るとか
「非行に走る」という単語といい、
昭和ネタの宝庫でもあります。

「100万乙女のバイブル」りぼんに
今なお伝説として君臨する迷……傑作です!

お父さんは心配症 1 (りぼんマスコットコミックス)

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『蒼き流星SPTレイズナー』その3

26話からの『レイズナー』第二部
またの名を

『北斗のレイズナー

大人の事情(婉曲表現)により作風が激変し、
当時人気だった『北斗の拳』っぽく
なりました。

第一部から三年後という設定で
地球はグラドスによって制圧されてしまい
エイジは行方不明。

都市の70%が破壊、人口も三分の一になる
という、核戦争後のような有様に。
(その辺も『北斗』っぽい)

当然、グラドスによる支配が始まりますが
一部の地球人たちを忠誠と引き換えに優遇し、
階級差を作ります。

エイジと共に戦った仲間たちも
グラドス側とレジスタンス側に立場が
分かれることに。

とはいえ、アーサーとシモーヌは元々
かなりのお坊ちゃん・お嬢様なので

実家がグラドスに忠誠を誓ったため
折角だからとレジスタンス側への
情報提供者になったのでしょう。

アンナは禁止された地球文化を守り広めるため
デビッドは銃を取り、共にレジスタンスに
身を投じ、

Dr.エリザベスも地下工場で密かに
地球側のSPTを作っていました。

ロアンだけが本当に裏切り者になったと
思われていましたが……。

それはともかく、主人公のエイジが
虚ろな目の浮浪者スタイルで再登場するのは

北斗の拳』第一話のケンシロウ
オマージュだったのかもしれません。

絶大なインパクトはありましたし、あそこで
殺されそうになっていた少年を逃がすため
一芝居打ったと解釈すればいいかと。

第一部のエイジは一人称「僕」で、ナイーブな
少年でしたが、第二部では「俺」。

体格も逞しくなり、トンファーを自在に操り
肉弾戦もこなせるようになります。

個人的に26話のラスト、デビッドがエイジに
抱き着いて再開を喜ぶシーンが大好きです。

エイジも本当にいい笑顔なんですよ……!!!

第一部でも笑顔を見せる時はありましたが、
緊迫した状況がひたすら続くので
表情が固いイメージが強く、

エイジにせよデビッドにせよ、第二部の方が
無防備な顔を見せる時が多いです。

しかしこのグラドスの地球統治、
今観ると実に深い……。

蒼き流星SPTレイズナー DISC7 [DVD]

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成田美名子『CIPHER』

『CIPHER』サイファ 85~)
80年代のアメリカを舞台に、ボーイッシュな
少女アニスと、学校の人気者で美形俳優の「シヴァ」
その双子の弟サイファとの友情と恋、
そして赦しを描いた物語です。

シヴァは額にビンディ(ヒンズー教徒の女性が
つける赤い点)をつけていて

同じところにほくろがあるという理由で
アニスは彼に友達になってくれるよう頼みます。

ところが「シヴァ」は双子の兄弟二人が
交代で演じていたものでした。

アニスが抗議すると二人は「二週間以内に
自分たちを見分けられたら事情を教えてやるが、
できなかったら一切詮索するな」

という賭けを提案、アニスはそれを受けて
同居を開始します。

 人気者のイケメンとの秘密の同居生活は
少女マンガの王道の一つです。

しかもこの時代のNYとか
昭和の憧れが詰まってますよ!

淡々とした展開ながらどうなるか目が離せず、

また話が進むごとにクールに振る舞っていた
シヴァとサイファの新たな一面が見えてきます。

サイファとシヴァは芸名で、

シヴァ(ジェイク)の方が一歩引いていて
人使いが上手く、
クールなようでも感情を抑えているだけとか

サイファ(ロイ)はモノに深く愛着を持ち、
突発的に何か買いたくなるとか

美形の双子という浮世離れしたキャラの
生活感のあるエピソードが、絶妙なバランスで
人間味を与えています。

しかし二人が完全に見分けられるようになった
アニスとサイファに恋愛フラグが立つ頃

シヴァが想いを寄せる女性、ディーナが
サイファに告白します。

真実を打ち明けるのをサイファの都合で
待ってもらっている間に、
ディーナは事故死してしまいます。

サイファは深く悔い、シヴァとアニスから
遠く離れたLAへ……。

そこで出会った優しく風変りな同居人・
ハルとの関わりもあって

やがてサイファはNYへと戻ってくるのでした。

自分を苦しめるのも赦すのも、結局自分自身なのです。

911で破壊されたワールドトレードセンターが
当たり前のように風景に溶け込んでるのが
今読むと切ない……。 

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『聖闘士星矢』双子座のサガ

二重人格・双子という単語が並んだら、
特定の世代はこの男が脳裏に浮かぶことでしょう。

善と悪の二つの顔を持ち、双子の弟カノンと
揃って『星矢』世界を引っ掻き回した
トリックスター

(※仲は悪いので組んではいない)

黄金12宮編のラスボスであり、今なお
ファンの間での「黄金最強は誰か?」の
論争の際には必ず上位に挙げられる聖闘士。

純金のフィギュア(130万円・50万円)
なんていう超高額グッズが真っ先に作られるのも
頷ける強烈なキャラです。

原作では13年前既に前教皇・シオンを
殺して教皇になりすましていましたが

アニメではサガが殺害して成り代わったのは
教皇の弟アーレスという設定になっていました。

シオン教皇の死後、アーレスが即位して以来
聖域に異変が……という流れです。

原作で最初に善と悪の人格が会話する場が
風呂場だったため、アニメで何度も使われ

(勿論ドラえもんの)
しずかちゃんかお前はとツッ込まれたことも。

12宮編が始まった当初から、教皇=双子座の
聖闘士では?と読者は予想していました。

よって双児宮は素通りかと思ってたのに

・目の見えない状態の紫龍が大活躍
・氷河が行方不明に
・瞬の大活躍、教皇に一撃くらわせる
・一輝復活を匂わせる
天秤宮に落ちた氷河がカミュに葬られる

無人の宮でこれだけ盛り上がるのはすごい。

正体が完全に確定していたにも関わらず
星矢と顔を合わせた際

罪を悔いて泣く、優しげな善の顔から
急に髪の色と(目の色も)キャラが激変。

教皇の法衣が破れ、素っ裸での
「ここへきて わたしの体を覆え!
わが聖衣よ!!」
には度肝を抜かれました。

白黒ページだと黒髪なのに、
カラーだと灰色になるのは不思議!

「ウワーッハハハハハ」とテンション高い悪役笑いで

星矢と一輝を相手に、ラスボスに相応しい
強さを見せつけてからの退場となりましたが

最期は善人としてアテナに悔いて逝くのでした。

ちょっとしんみりしたラストが車田漫画らしい。

カノンや他の聖闘士たちもまたそのうちに。