日本の戦国時代を描いた
『雪の峠』『剣の舞』の
二作品を収めた作品集です。
今回は『雪の峠』(99~)を
語ります。
簡単にまとめると
関ヶ原で西軍についたため
領地を減らされ、東北に
追いやられた佐竹家で起きた
家臣たちの世代交代劇。
冒頭、関ヶ原で東軍・西軍
どちらにつくかで議論を
戦わせます。
家臣たちの意見は東軍が
優勢でしたが
若き領主・佐竹義宣は
西軍につくと表明します。
(主人公の内膳は東軍についた
場合、領土は無事に済むだろうかと
尋ねて重臣たちに叱られている)
結果、関東から東北へ
追いやられ、領土は三分の
一に減ることに。
ある時、国の中心となる府を
どこに据えるかで新旧の
家臣の間で意見が割れます。
義宣と側近の内膳が出した候補地
「窪田」は戦が終わった前提の案。
平和な世で産業貿易が発展する
前提での街づくりでしたが
古参の家臣は戦に備えた
街づくりができる場所を提案。
予算を度外視した規模の大きさや
五百年前の先祖との縁まで
強調して、家臣たちを引き込みます。
ここで大殿・佐竹義重が
第三の案を提案。
古参家臣に賛成する者たちを
減らすためでしたが
古参家臣たちはそれを利用。
自分たちの意見を取り下げ、
大殿の意見に賛同します。
要は若殿と側近たちの
案を潰したいだけという
現代でも、社長が世代交代直後の
会社で起きてそうな話ですね。
しかし、佐竹家が候補地を
どこに決めようと、結論を
出すのは幕府です。
内膳は重臣の一人に言われた
「年寄りたちを黙らせたかったら
戦で勝ってみよ!」
その言葉をヒントに内膳は
見事に窪田案を幕府に
認めさせます。
詳細はここで説明するより
ぜひ読んでほしい!!
鮮やか!お見事!と
いうほかありません。
「窪田」が発展して
現代に繋がっているという
オチで更に畳みかけます。
なお表紙の人物は顔が
描かれてませんが、装束で
上杉謙信と分かります。
ここでの「謙信」は
戦国時代という過去の
象徴です。
謙信に憧れる重臣たちは
時代が変わったことを
認められず……。
淡々とした話なのに
ものすごい傑作です。