『妖怪の飼育員さん』(15~)は動物園のように
妖怪が集められ、お客に見られる「妖怪園」が
当たり前に存在するという設定の
現代日本が舞台のファンタジー漫画です。
天然の新米飼育員・鳥月日和(とりつき ひより)が
主人公ですが、彼女視点が多いというだけで
メインは妖怪たちの生態と人間との交流です。
「すねこすり」の可愛いけど足にまとわりついて
離れなくなる習性に苦戦したり、
「さとり」が心を呼んで喋ってしまうため
お客の抗議が殺到、「人間関係を破壊する
怖れがある」と対策を立てたところ
斜め上の需要が生まれていた……。
など、言葉が通じない苦労もあれば
人間の言葉を理解するからこそのトラブルも
発生します。
個人的に餓鬼のエピソードが秀逸だと思いました。
お菓子を食べている子供のお客に絡んで
「我々は飢えているのに!償(まど)うて
くれガキ!」
しかしあげたらあげたで
「これっぽっちで足りると思うか?
償うてくれガキ!」
要求は次々エスカレートし、泣きわめいたり
歌ったり踊ったり芝居したりして
自分たちが被害者だとパフォーマンス。
とにかく謝らせ、何かを得ようとします。
それを目にしたお客の一人が
「こんなに必死に訴えてるんだから
聞いてあげたらどうなんだね?」
その「良心的な人間」は新聞記者で、
よく調べもせず、園側のインタビューも
適当に切り取ってでっち上げ
国会で取り上げられるほどの大騒ぎに……。
これ以上は書きませんが
皮肉の利いた展開とオチが実にいい。
風刺的な話ばかりでなく「屏風のぞき」という
覗く習性のある女妖怪が、育児放棄され
閉じ込められていた子供を見つけて救ったり
子供を攫う姑獲鳥(うぶめ)が
保育園に入れない子供を迎えに来て
預かってくれたりと
子供と妖怪、妖怪と飼育員、あるいは妖怪同士の
ほのぼのとした交流も描かれます。
時折挟まれるパロディもいいアクセントです。
基本一話完結ですので、どの巻から読んでもでも大丈夫ですよ。