『聖(セント)アリス帝国』(76年~)は
主人公・花木桃子の視点で特殊な高校
「聖アリス学園」を描いた作品です。
桃子自身は“元気な普通の子”
くらいのキャラですが、
周りのキャラや学校の設定が猛烈に濃い。
・別名「女王陛下」と呼ばれる生徒会長。
・「貴族」と呼ばれる特権階級が他の
一般生徒たちより露骨に優遇される。
・それに反発し「貴族」だけを相手に盗みを働く
仮面に黒マントの「怪盗ゼロ」が生徒たちに大人気。
・同じく「貴族」の部活に殴り込んでは
優勝カップなどを奪っていく「海賊キッド」
※現代日本の高校の話です。
教師よりも権力のある生徒会に
教師より厳しい風紀委員、
特ダネを狙って学校をうろつく新聞部、
「~じゃよ」なんて語尾であだ名は「おばば」
占いの達人なんていう無駄にキャラ立ちした生徒、
反抗的な生徒は地下牢で拷問、
演劇部の美人部長「薫の君」が靴箱を開けると
ラブレターが雪崩のように落ちてくる……。
このザ・昭和な感じ、もはや愛おしいと言うほかない!!
この話のメインは怪盗ゼロで、彼の正体や秘密
桃子との恋愛フラグなどが描かれますが、
私のお気に入りは「海賊キッド」
『ガラスの仮面』の速水さんや桜小路くん
『妖鬼妃伝』の九曜さんなど、
美内作品の男性キャラは
物静かとか、大人しいタイプが多いのに、
キッドは珍しくワイルドな二枚目です。
常に眼帯、シャツは思い切り前を開け、
首にスカーフを巻いてフェンシングの剣を持ち、
子分たちから「頭(かしら)」と呼ばれてる。
勿論キッドの方でも「やろうども!」ですよ。
数年後に床を転げまわりそうなほどいい感じに
こじらせてますね!
ちなみに本名は木戸次郎です。
全四話なんですが、伏線をたっぷり残して終わってます。
もっと読みたかったな……。
この作品発表時、既に『ガラスの仮面』は
連載がはじまっています。
ツッコミどころ満載なのに、読者を強引に引き込む
強烈なエネルギーの塊ですよね、昭和のマンガって。