『エロイカ』の魅力は何と言っても伯爵と
少佐のキャラとその関係性です。
全く別の目的で潜入したイランで
ばったり顔を合わせた際は
親しげに抱き合い、挨拶するふりをしながら
傍から見えないようナイフと銃を突きつけあって
いたというスリリングな関係がたまりません。
伯爵いわく「絡み合うバラとワイヤー・ロープ」
伯爵が抱きついたり口説いたりして、少佐が嫌がるばかりでなく
KGBの仔熊のミーシャが少佐をヒトラーネタで
侮辱した時、少佐より先に伯爵が引っぱたいて
「君が手をあげる価値はない」と言った
シーンが大好きです。
軍人と怪盗というのは警察と怪盗、警察と
殺し屋ほどには「追う者と追われる者」が
確定した関係ではないので
目的によっては追跡劇になり、時には
協力したり出し抜いたりと、かなり自由自在に
立ち位置が変わるのも独特です。
前述しましたが少佐はドイツ貴族で代々の軍人家系。
仕事熱心で合理的なものを好む、
堅物が服を着ているような性格。
ケガで入院してるのに、天井のシミが気になって
掃除しちゃう人です。
ギムナジウムのシスターとのイモ畑とフライドポテトの
思い出が実に微笑ましい……。
今でも尼さんに甘くなるのもいいですね。
実は絵が下手なの気にしてるのも可愛い。
少佐が真面目であるほどに(それ自体でも面白いけど)
伯爵のキザでお気楽な性格が際立ちます。
初期の表紙ではよく赤いバラを手にしており、
毛皮の下は上半身裸とか、有名な詩を口ずさむとか
「キザが息をしている」キャラでした。
金儲けより自分の美学を優先し、偽物でも気にしないし
心意気が気に入ったら盗んだものも渡してしまいます。
そんな浮世離れした伯爵に、絶妙な生活感を
与えているのが会計士のジェイムズくん。
「ドケチ虫」と少佐から呼ばれている通り
どんなものでもお金に換算し、値切り倒してきます。
お金への執着は凄まじいのに、浪費家の伯爵が
大好きというのも深い業を感じます。
伯爵の部下の中では最もキャラ立ちしていて
外伝まであります。
常識人、ボーナムくんの苦労は絶えない……。
コメディ多めの作風ですが、出てくる国際情勢・
歴史・文学・雑学知識数え切れず。
愛読者はすごく教養が身についた……気がします。
続きはそのうちに。
「エロイカより愛をこめて」作品舞台を巡る世界の旅 「エロイカ」の歩き方
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