昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

曽田正人『昴』その2

『昴』にはもう一人の天才、NYのトップダンサー
プリシラ・ロバーツが登場します。

実はプリシラが一番好きなキャラです。

すばるたちの刑務所慰問は、前半部分だけが
切り取られ「囚人を感動させたバレエ団」と
美談として新聞記事に小さく載ります。

それを見つけたプリシラ

(アレはどう見ても拷問でも受けてるような
表情だったわ)

(バレエを踊って、一体どうすれば
あんな惨状になるのかまったく思いつかない……)

初登場時はすばるとは真逆の、
充実した人生を送るベテランとしての
余裕たっぷりな感じを見せてからの

(意味があろうがなかろうがそんなことはどうでもいい。
この地上のどこかで、私にできないことを
やっている者がいるっていうことよ……!!)

プリシラは気になって仕方なくなり、
すばるに直接会いに行きます。

彼女の人生楽しんでる感や、足の基礎練習を
毎日2時間も笑顔でやってるところ
(=努力とか義務を越え、喜びとして)

「宇宙人が来たらバレエでコミュニケーションする」と
かなり本気で考えている無邪気なところとか
実に素敵なキャラです。

後にプリシラとすばるは同じ日に『ボレロ』の
公演がかち合ってしまうのですが、

何故か空間を越え、舞台の上で鉢合わせるという
不思議な現象が起きています。

個人的にはもっとプリシラが見たかったのですが
すばるは就業ビザを取得していなかったため
アメリカを国外退去になってしまうのでした。

双子の弟や師匠のオバちゃんなど、身近な人の
死や孤独のせいで昏い影のあるすばるとは対照的に

願った夢のままに生きているという
プリシラの「光」を、すばるがいい影響として
受けられたらと思ったんですけどね……。

あとすばるの幼なじみ・真奈ちゃん超いい子です。

ローザンヌを独り舞台にされて悔し泣きした翌日、
高熱で入院したすばるにお見舞いカード送ったり

後悔するとわかってるのに世話焼いちゃうところとか
ほんと好き。

続編『MOON』についてはまた後日。

昴(10) (ビッグコミックス)

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曽田正人『昴』その1

『昴』(00~)は主人公の少女・宮本すばるが
バレエダンサーを目指すお話です。

序盤は子供時代。すばるには天馬という双子の
弟がおり、脳腫瘍でずっと入院中でした。

すばるは呼吸器をつけた弟とのコミュニケーション
手段として「踊る」ことを思いつきますが
やがて弟は早すぎる死を迎えます。

彼女の踊りをバレエに変えたのは、元ダンサーで
今はキャバレーの経営者・日比野五十鈴でした。

長々説明しましたが、すばるは特殊な事情を
抱えた天才ということです。

 

曽田正人作品は「ブッ飛んだ天才を
描かせたら天下一」という特徴があり

『天才の足元には、大勢の残酷なまでに
打ちのめされた凡人たちがいる』という
シチュエーションが何度も登場します。

特に7巻では

ずっと独りきりで踊ってきたすばるは、
仲間たちが支えてくれていることに気づき

「あたしはひとりじゃない!!」
その喜びが踊りに反映され、観客を沸かせるという
普通のマンガなら感動的なシーンです。

しかし、その観客は刑務所にいる囚人たち。

最初は若い娘のダンスを面白半分に眺め、次第に
物語に引き込まれていきますが、途中で我に返ります。

(こんなの見せられて明日から
どうやって過ごしやぁいいんだよ
鉄格子の中で!!!)

すばるが今酔いしれている自由、充実感、幸福感は
獄中にいる自分たちとは対極のものなのだと。

囚人たちの感情は羨望から絶望へ、そして暴動へ……。

「ヤバい……!!」とバレエ団メンバーが
撤収作業を急ぐ中、踊り続けるすばる。


(あたしをうらやましがって 泣いてる人までいる!!
キモチイイーーーーー!!!)

すばるの人生はものすごく過酷で、親の愛情は全て
病床の弟のために注がれ、

師匠のオバちゃんも「こんな場末のキャバレーに
いつまでもいちゃいけない」という思いから
すばるにストレートな愛情を示しませんでした。

だからすばるの「仲間を得た」喜びは尋常じゃないと
理解していても、ツッ込まずにはいられません。

マジ鬼畜!!

続きます。

 

昴(1) (ビッグコミックス)

昴(1) (ビッグコミックス)

 

 

あさぎり夕作品について(初期~『あこがれ』まで)

あさぎり夕先生の初期作品って
もの悲しげな印象があります。

短編集『青い宇宙のルナ』
『花詩集 こでまりによせて』
収録されてる70年代の作品に特に顕著です。

70年代は一条ゆかり里中満智子といった
有名作家たちも悲劇オチの傾向があるので
流行だったのかもしれませんが

コミカルな『あいつがHERO!』でも
若菜と父親が実は血が繋がっておらず、

若菜が大好きな絵本の作者こそが
実親(既に死去)だった話がありました。

ライラックの君は若き日の養父が
モデルで、甥に当たる一人が
そっくりなのはそのため。

ジョーが主役のスピンオフ
『あしたからのHERO』だとヒロインの
綾乃は暴走族の抗争に巻き込まれて
事故死していますし、

『こっちむいてラブ!』では
ラブをモデルにしていた写真家の
草(そう)さんが途中で病死し、

『あこがれ冒険者(アドベンチャー)』
主人公ミィが惹かれていたキングが死んでしまいます。

多分ご本人が悲劇的な展開を好む
傾向があるのでしょうが、

それでも「なかよし」の小中学生読者に
合わせてだいぶコミカルに、可愛らしい
作品にしてくれていたのだと思います。

個人的には短編2作しかない
『ちょっぴり危険なラブ講座』のような
ドタバタコメディももっと見たかったです

後にBLに行かれたと知った時は
驚きと共に「ああ、やっぱり……」と
納得もしました。

男同士の絆とか関係性が
必要以上に濃く描かれてましたからね。
(あえて具体名は挙げない)

ところで『あこがれ冒険者(アドベンチャー)』の
褐色の肌の美形キャラ・キングが自分の所持品には
インカの太陽神ビラコチャのマークを入れているという
設定があり、

ビラコチャって結構複雑な図柄なのに
キングがちまちま刺繍してるんだろうかと
ちょっと想像して萌えた。

あと『アップルどりぃむ』のマン研の部長さん、
「この人、男専門」と言われていた彼女こそ
あさぎり先生に一番近いキャラだった気がします。

62歳なんて本当に早すぎますよ……。

 

あさぎり夕『あいつがHERO!』

『あいつがHERO!』(82~)は
初恋が絵本の中の王子様という夢見る少女・
麻生若菜が主人公のラブコメものです。

※正式名称は「ライラックの花の王子様」
通称・ライラックの君。

高校生になっても王子様ラブは変わらず、
担任教師にバレて笑いものになる有様。

そんな子供っぽい若菜に、父親がその場の
勢いで約束しちゃったなんてノリで
「風見竜」という婚約者ができます。

竜の名前で出された若菜あての、
スミレの花が添えられたラブレターにちょっと
期待したのもつかの間、

竜は剣道部主将のゲタ履きバンカラ男で、
「負け知らずのケンカ竜」の異名を持つ番長。
若菜の好みとは全くの対極でした。

ショックを受ける若菜の前に、従兄だという
田切一人(おだぎり かずと)が現れ、同居することに。

一人さんは何故か「ライラックの君」に
そっくりでした。

若菜は当初、一人さん一択なのですが
乱暴者だと嫌っていた竜と関わるうちに
二人の間で揺れ動くように……。

 

このお話(というかあさぎり作品全般)の
特徴はとにかく男性キャラが魅力的。

特に竜は少年漫画の主人公のような
古風な男らしさのキャラでした。
ザコンなのもまた可愛い。

 優等生で性格温厚な王子様タイプの
一人さんも腕っぷしは結構強く、

前述のニセのラブレターを書いた
竜の悪友・宇佐美ジョー。

ハーフで中性的な美形で、
派手な格好、飄々としたふるまいながら

実は竜よりケンカが強いという
底知れぬキャラ。

 

またこの作品は、キャラ立ちの良さから
いくつものスピンオフが描かれるほど
人気作でした。

ジョーの暴走族時代と竜との出会いを
描いた『あしたからのHERO』

アメリカに留学した一人さんが主役の
『センチメンタルHERO』

竜の仲間の一人、寡黙な一平くんの
恋物語『呼ばせてMy HERO』

どれも胸をときめかせた名作で、
キレイなカラーイラストの付録は宝物でした。

あさぎり夕先生のご冥福をお祈りします。
本当にありがとうございました。

 

 

『超獣機神ダンクーガ』その2 司馬亮

本日11月2日はビックモスのパイロット、
白バラを咥えて登場する愛しのキザ兄さん
司馬亮の誕生日です!!めでたい!!

というわけで今日は亮の話を。

亮は前半はリーダーの忍とぶつかることが
多かったですが(そして忍が負ける)

中盤以降は忍を支えるようになったため
沙羅や雅人も自然とそれに従い
チームワークが良くなります。

亮の方向転換のきっかけは15・16話。
シャピロの罠にハマり、中国奥地の砂漠で
孤立して消耗戦を強いられる獣戦機隊。

亮が野生馬の群れに紛れて脱出し、
輸送部隊兼補給部隊の元へ。

亮が無事にエネルギーを届けるために
輸送部隊隊長・ゲラールが囮になります。

(ゲラールはこの決断を
「一生に一度の晴れ舞台」という認識で
兄貴と呼ばれるに相応しい
見事な漢死にを見せてくれます)

ゲラールの死を知った忍たちは
初めてダンクーガへの合体を果たすのでした。

初登場の際、亮はわざとマニュアルを見ずに
ビッグモスを動かし「その方がスリルがある」と
言っています。

そのくらい自分の腕に自信があったということ。

しかしゲラールが自分たちのせいで犠牲になり
彼なりに考えるところがあったのでしょう。

それからは縁の下の力持ちという
役割になっていきます。

ちなみに13話の回想シーンだと
亮は10代前半くらいに孤児になったようです。

斜に構えた態度の理由はその辺にも
あるのかもしれません。

ずっと気になってたんですが、シャピロといい
亮といい、士官学校トップの成績にも関わらず

(同じく孤児の)シャピロは学校に残って教官、
亮は拳法の修行と称して放浪の旅へと
いうのは

※メタ的にその方が都合がいいからと
いうのはナシで

ゾルバドス軍の侵攻まで世界が平和すぎて
地球軍に血縁のコネがはびこってたから
だったりして……。

それだとイゴール将軍の息子でありながら
アランが士官学校出じゃない
(「独学」と設定資料にあった)理由も
わかるんですよね。

ダンクーガは好きすぎるのでまたそのうちに。 

 

あfろ『ゆるキャン△』

祝!!『ゆるキャン△』二期&劇場版決定!!

ゆるキャン△(15~)は女子高校生たちがゆるく
キャンプするほのぼの部活ものです。

△はテントマークなので発音しません。

2017年秋にアニメ化し、私も含めて
皆がハマりました。

アニメ版の何が素晴らしいって、湯気の使い方。

ちょうど寒くなる時期のアニメ化だったため
白い吐息で寒さを、お茶や温泉の湯気で
温かさを見事に演出。

寒くてもキャンプ場について、温かなお茶や
スープや鍋、そして焚き火で温まるという
誰もがほっこりするシチュエーションは
インドア派が多いはずのオタクも虜にしました。

勿論、可愛いキャラたちの個性や
やり取りも魅力的で、

ソロキャン派のクールな女子高生・志摩リンは
キャンプ中に

引っ越した初日に富士山見たさに遠出し、
バス停でうっかり寝過ごした各務原(かがみはら)
なでしこと出会い、手助けします。

その後なでしこは転校先の「野外活動サークル」
(通称:野クル)に入り、
リンとも校内で同級生として再会するのでした。

野クルメンバー、愉快なメガネっ子の大垣千明と
とぼけた関西弁娘犬山あおいのコンビとなでしこの
3人でキャンプする回もあれば

リンとなでしこの二人、あるいはリンのソロキャンを
なでしこがナビするなどキャンプする人選は様々。

テントの種類の違いや、キャンプ道具の
手入れ方法、備長炭の火の起こし方、

焚き火は肌が乾燥するので
化粧水をつけたほうがいいなど
役に立つ知識も描かれています。

しかし何と言っても、このゆるく和んだ
時間の過ごし方に憧れた人が
多数出たことがヒットの理由でしょう。

こぼれ落ちてきそうな星空の下、
仲の良い友達と焚き火を囲んで
キャンプとか、

温泉につかって揚げ温泉卵食べたり、
クリスマスキャンプとか最高じゃないですか!!

特に意味もなく何度も見返したくなる
そんなアニメでした。
(もちろん原作も)

あとキャンプ中でもSNSで繋がってるのが
すごく今風だと思います。

 

ゆるキャン△ 1 [Blu-ray]

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TVアニメ「ゆるキャン△」オリジナル・サウンドトラック

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池野恋『ときめきトゥナイト』その2

ときめきトゥナイトと言えば、
蘭世の恋のライバル/・神谷曜子
(以下神谷さん)も印象深いキャラでした。

80年代らしいバイタリティに溢れた
イキイキとしたキャラクターでしたね。

意地悪なライバルを魔法で
犬やブタに変えて使役するというのは
コミカルかつ胸のすく仕返しですが

ヨーコ犬は(ちょっとダックスっぽい)
可愛くて勇敢で、作者の想像も越えた
活躍をしたんじゃないかと思います。

その分、神谷さんの時間と人生を蘭世のために
使っちゃったわけで、そこはちょっと可哀想かも。

蘭世は基本大人しい子だし、真壁くんも
ぶっきらぼうで照れ屋のツンデレ属性なので

前半のまだ人間界での生活がメイン
だった時は神谷さんがグイグイ物語を
引っ張ってくれたと思います。

たまに来る真壁くんのデレの破壊力
ハンパねぇ……!!!

あと個人的に死神ジョルジュさん、
いい人で好きでしたね。

この作品は3部構成になっていて
蘭世の物語が第一部。

母親の人狼の血が濃く出た蘭世の弟・鈴世(リンゼ)と
その彼女、人間だけど動植物やモノの声が聴ける
市橋なるみちゃんが主役の第二部「なるみ編」

蘭世の娘で、将来大魔女になるという愛羅を
主役にした第三部「愛羅編」と
世代交代していきます。

バカ王子だったアロンもすっかり立派な王様になって
初期から読んでいるととても嬉しい。

長い物語のため、年下の友人と話していた時
「真壁くんって誰かと思ったら、愛羅ちゃんの
お父さんかぁ!カッコいいですよねー♪」

と言われた時は猛烈なジェネレーションギャップを
感じたものです。

他にも真壁くんとアロンの設定が入れ替わった
ときめきミッドナイト

真壁くん視点で第一部を描く
『真壁俊の事情』

蘭世の両親の物語『江藤望利のかけ落ち』

各キャラクターのエピローグも兼ねた
ときめきトゥナイトー星のゆくえー』など

スピンオフ作品が多数あります。

昭和から平成までこれだけ続いているのだから
乙女の萌えツボは今も昔も
そう変わらないのかも……?