昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

曽田正人『昴』その1

『昴』(00~)は主人公の少女・宮本すばるが
バレエダンサーを目指すお話です。

序盤は子供時代。すばるには天馬という双子の
弟がおり、脳腫瘍でずっと入院中でした。

すばるは呼吸器をつけた弟とのコミュニケーション
手段として「踊る」ことを思いつきますが
やがて弟は早すぎる死を迎えます。

彼女の踊りをバレエに変えたのは、元ダンサーで
今はキャバレーの経営者・日比野五十鈴でした。

長々説明しましたが、すばるは特殊な事情を
抱えた天才ということです。

 

曽田正人作品は「ブッ飛んだ天才を
描かせたら天下一」という特徴があり

『天才の足元には、大勢の残酷なまでに
打ちのめされた凡人たちがいる』という
シチュエーションが何度も登場します。

特に7巻では

ずっと独りきりで踊ってきたすばるは、
仲間たちが支えてくれていることに気づき

「あたしはひとりじゃない!!」
その喜びが踊りに反映され、観客を沸かせるという
普通のマンガなら感動的なシーンです。

しかし、その観客は刑務所にいる囚人たち。

最初は若い娘のダンスを面白半分に眺め、次第に
物語に引き込まれていきますが、途中で我に返ります。

(こんなの見せられて明日から
どうやって過ごしやぁいいんだよ
鉄格子の中で!!!)

すばるが今酔いしれている自由、充実感、幸福感は
獄中にいる自分たちとは対極のものなのだと。

囚人たちの感情は羨望から絶望へ、そして暴動へ……。

「ヤバい……!!」とバレエ団メンバーが
撤収作業を急ぐ中、踊り続けるすばる。


(あたしをうらやましがって 泣いてる人までいる!!
キモチイイーーーーー!!!)

すばるの人生はものすごく過酷で、親の愛情は全て
病床の弟のために注がれ、

師匠のオバちゃんも「こんな場末のキャバレーに
いつまでもいちゃいけない」という思いから
すばるにストレートな愛情を示しませんでした。

だからすばるの「仲間を得た」喜びは尋常じゃないと
理解していても、ツッ込まずにはいられません。

マジ鬼畜!!

続きます。

 

昴(1) (ビッグコミックス)

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