本作の凄いところの一つは
女の業の深さを、昭和の
少女たちに容赦なく
見せつけてるところ。
例えば10巻
「ギロチンが招いた女」
舞台は革命期のフランス。
今回の主人公はスリ兼
娼婦の若い女。
貴族の姿に扮してパリを歩く
悪魔デイモスの懐を狙ったのが
きっかけで
「ほどこしをしてやろう」と
言われます。
大雑把に話をまとめると
ある時、女は一人で川辺にいた
身なりのいい貴婦人を
ナイフで脅して衣服を
交換させるが
貴婦人の正体は気分が悪いと
逃亡中の馬車から出ていたマリー・
アントワネットだった。
(帽子についてたベールで
顔は隠れてた)
革命勢力に見つかって
パリへ連れ戻されるのは
史実通り。
ルイ16世と臣下たちは
王妃だけでも助かって
ほしいと口をつぐんだため、
女があたいは王妃じゃないと
叫んでも、誰も信じません。
ある時「王妃」のもとに
フェルセン伯が訪れ、
別人なことに驚きます。
女は最初は助けてほしいと
頼みますが、やがて
ある取引を持ちかけます。
(台詞は意訳)
「王妃の身代わりに
なってやるから、今夜一夜
王妃としてあんたの愛を
捧げてもらう」
あんたは本物を探し出して
国に連れ帰ればいい。
人から蔑まれて生きてきた
自分に、この世で一番高貴な
恋が手に入るなら偽りでも
いいと……。
フェルセンは取引を受け、
女は最期の瞬間まで堂々と
王妃らしく振る舞います。
子供の頃は(結局は
偽りの愛なのに……)
という感想でしたが
本物を手にできる可能性は
ゼロなんだから、偽りでも
いいってなるよなって……。
仮にフェルセンなり誰かが
女は全くの別人だと証言して
助けようとしても
王妃を行方不明にした原因の
女を革命勢力がどう扱うかって
考えると(自粛)
万が一無罪放免されても
スリ兼娼婦に戻ったところで
末路は予想がつきますし
結局は王妃として処刑される
ルートが一番幸せでしょうね。
こういう「偽りの愛」のために
破滅する話、本作は結構多いです。
実は女はフェルセンやアントワネットと
素性を知らずに以前にすれ違っていて、
伏線や構成が見事なお話でもあります。
続きはまたそのうちに。