昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

吟鳥子『アンの世界地図』その1

『アンの世界地図~I's a small world~』(13~)
アル中毒親の母の元を飛び出した金髪ロリータ娘の
アンは、ひょんなことから古い一軒家で
一人暮らしのアキの家に同居することに。

様々な人との出会いや体験を通じて
アキと共に新たな人生へと踏み出していく
優しくも切ない、家族がテーマの物語です。

この作品の語り部はアキの家の「うだつ」
“うだつが上がらない”という慣用句でしか
あまり聞かない家の重要パーツです。

曾祖母の時代からアキの家族を
「家が」ずっと見守ってきたということを
頭に置いて読み進めてください。

序盤は東京にいたアンの悲惨な
生活事情から始まります。

お嬢様言葉やロリータ服は、ネグレクト状態で
育ったアンが自分を支えるため、懸命に働いて
得た「鎧」でした。

しかし、その服を酒に酔った母にボロボロに
されてしまい、アンは家を出ます。

徳島にある祖母の元へ行くはずが、住所の
書かれたハガキを海に落としてしまい、

更にサルに襲われているところを
助けられたのがアキとの出会い。

怖い、苦手と思い込んでいたお年寄りや
若い男と話して克服したり、
梨を摘むアルバイトをしたりと
アンの挑戦と新発見の日々が始まります。

当初はアンが田舎暮らしを通じて成長していく
物語かと思われましたが……。

ある日一人で買い物に出かけたアンは水琴窟の中、
外国人の幽霊に出会います。

第一大戦後、青島で俘虜(=捕虜)になり、
徳島の収容所に送られたドイツ兵でした。

彼の名はジャン・マイズナー上等兵

日本語ができるため、収容所でも
通訳として重宝されました。

映画「バルトの楽園」にも描かれた通り
待遇は良かったのですが
母国の戦況など、悩みは尽きません。

 そんな中、マイズナーさんはできる限り楽しんで
暮らそうとし、他の捕虜たちも協力して
講演や芝居を開催したり、運動部や郵便局まで
作ります。

 彼の語る収容所と仲間たちの話はいつしか
アキのひいおばあさん「秋」と繋がって
いくのでした……。

続きます。

アンの世界地図~It’s a small world~ 1 (ボニータ・コミックス)