昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

吟鳥子『アンの世界地図』その2

 美少女「秋」に、マイズナーだけでなく
プロイセン貴族シュヴァンシュタイガー大尉や
アルザス人の海兵フッペなど、他のドイツ兵も
思いを寄せていました。

しかしドイツの降伏で微笑ましい日々は終わり、
兵士たちには過酷な現実が待っていました。

 捕虜生活から解放されたマイズナーは
手紙は何度も送るも、諸事情あって秋に
直接会えたのは数年後。

その時秋の傍らには、誰が父親かわからない
混血の娘アオイがいました。

マイズナーは秋にプロポーズして、アオイの
父親になるのですが、ドイツ国籍を得た秋は
二人を置いて行方をくらませてしまいます。

マイズナーはアオイを娘として愛しますが
アオイはそれを拒否し続けて……。

結構長い回想ですが、このバックストーリーを
じっくり描かないと、アキとアオイが背負っている
ものが伝わらないのです。

回想後、アオイがアキとアンの前に現れてから
物語は大きく動き始めます。

アオイは90過ぎてもなお美人ながら性格が
キツく、アンに対しても容赦しません。

しかし彼女の言葉は正論で、
アンは真面目に将来について考えはじめます。

親がかける言葉は「呪い」にもなると
いうのは、回想でもアンのエピソードにも
重ねて出てきますね。

序盤、棘たっぷりの嫌味でアンを悩ませた
アキの幼なじみキヨヒコを
今度はアンがアキを救うため、過去の真相解明に
協力しろと振り回すのが痛快です。

頑なに口を割ろうとしないアオイとアキ。
しかしそこに一つの奇跡が……。

マイズナーさんとアオイの愛情、
アオイとアキの愛情がずっとすれ違っていたのが切ない。

この物語はアンがアキという優しい避難所を見つけ、
今度は成長したアンがアキを閉じた世界から
連れ出す流れになっています。

ラストの

 自分を女の子だと思えば女の子ですし
貴族だと思えばどんなところでも
貴族でいられます

おとうさんも おかあさんも
家族も……恋人かどうか……も

それをやりぬくと決めるかどうか……
それだけです!

は名言。心に沁みる名作です。

 全5巻なので読みやすいですよ。

アンの世界地図~It’s a small world~ 5 (ボニータ・コミックス)