昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

隆慶一郎 原哲夫『花の慶次ー雲のかなたにー』その2

前回語った通り、人として武将としての
魅力に溢れた慶次ですが、

養父前田利久が弟・利家に前田家の家督
奪われたため生涯日陰の身という悲哀の設定も
よりキャラを引きたてます。

そのため前田利家が悪役として登場しますが
家督を奪った後ろめたさや嫉妬心を抱えた
人間くさいキャラでもあります。小物だけど。

利家の妻・まつは慶次や盟友・奥村助右門の
憧れのヒロインとして描かれます。

利家との年齢差は11なのに、この作品では
親子ほど見た目が違うような……?
というのは気にしないように。

序盤、慶次は加賀にいますが
養父の死をきっかけに脱藩します。

 お供は序盤で「耳削ぎ」という凄惨な行為を
強いられていたのを救い出した少女・おふうと
下忍の捨丸。

無表情だったおふうが笑ったり、子供らしく
拗ねたりするようになるの、いいですよね……。
(おふうは後に素性が明らかになります)

捨丸に限らず「飛び加藤」や「骨」など、慶次は忍に
“自分の手で殺したいから他人に取られないよう
護りたい”という気持ちにさせるらしく、
慶次もそれを承知で傍に置きます。

最初は嫌がっていた捨丸が、最終的には
松風を周囲に紹介する際に「前田慶次の馬にて候!」と
楽しそうに歌い踊るようになるエピソード好きです。

 下司キャラや悪人を退治したり
戦場で無敵の強さを見せつけたり、
家康や秀吉など歴史上の有名人に認められるなど

慶次の胸のすく活躍も印象深いですが
様々な人間模様もこの作品の魅力です。

奥村助右門や直江兼続など本物の男たちとの
深く静かな友情、

序盤の北条方の武将・古谷七郎兵衛や蝙蝠などは
最期は「敵ながら天晴れ」な男として描かれ、

村井親子や坂田雪之丞など弱いながらも意地を通そうと
するキャラと、それを優しく見守る慶次の関係性も素晴らしい。

  悲劇的な結末も多いのですが、
あまり暗い印象がないのは慶次の陽気な性格と
死を誉れとして描かれる、時代物らしい
作風によるものでしょうか。

続きはまた後日。