『怪盗アレキサンドライト』(06~)は
19世紀末のパリを舞台に、財宝では
なく「本人の一番大事なモノ」を盗む
変わり種の怪盗、アレキサンドライトと
それを捕まえようとする青二才のお坊ちゃん、
ヴェルヌ警部との捕り物劇を描いた
オカルト風味の入った不思議なお話です。
アレキサンドライトは警官に変装
することが多いため男と思われて
ますが、実は女。
夜の顔は姉御肌の高級娼婦ルージュで
昼の顔はヴェルヌ警部の歳の離れた
妹・ポーリーヌの家庭教師、
真面目でお堅いジャンヌ先生。
彼女の依頼人は故人で
カラスが運んでくる依頼書を
きっかけに動き出します。
盗まれるのは故人のラブレターや
無名の画学生の描いたデッサンなど
金銭的な価値はないモノ。
そのまま盗みっぱなしでなく、
ちゃんと返してくれます。
この話の見所は三つ。
1:アレキサンドライトの言動を
きっかけに、盗まれた被害者が
本当に大切なものに気づく
ほっこり話。
ミステリー仕立てだったり
オカルトっぽかったりと
何でもアリです。
基本的にはハッピーエンドですが、
たまにバッドエンドも。
2:ルージュとジャンヌ先生の間で
揺れるヴェルヌ警部の不思議な
三角関係。
何度も捜査現場で見かけるルージュを
さすがにヴェルヌ警部もアレキサンド
ライトの仲間と推測しますが、
捕えて情報を吐かせるでもなく、
怪盗へのメッセージを預けたり
緑色の目の女を狙う殺人鬼が
現れた時は心配したりと
紳士なのがいい。
アレキサンドライトが殺人容疑を
かけられた時には
「僕が無実を証明してみせる!」と
意気込んだこともありました。
追う側が最大の理解者でもあると
いうのは怪盗物のお約束ですね。
3:19世紀末パリの文化の
耽美と頽廃の雰囲気を味わえる。
背景のアール・ヌーボーデザイン、
ジャポニズムなど文化的な流行から
ロートレック、サラ・ベルナール、
ロダンとカミーユ・クローデル、
ビアズリー、ユトリロなど
実在の人物も登場します。
19世紀末パリはロマンの宝石箱やで……。
なお怪盗の正体は(内緒)