『風の城砦(カスバ)』(90~)は
19世紀末の仏領アルジェリアと
パリを主な舞台に、フランスの名門貴族
パトウ家の人々を、主人公ソレイユを
中心に描いたオカルト風味の歴史ロマンです。
大雑把なあらすじは
仏領アルジェリアで、執事っぽい
イケおじのアルビオンをお供に
人を探す若き男装の麗人、ソレイユ・
ルナ・ド・パトウ。
彼女が探しているのは、20年以上
前に消息を絶った伯父と叔母。
手がかりは二枚の古い写真と
彼女が持つパトウ家特有の
鮮やかな青い瞳。
たまたま行き合わせた日本人で
フランス外人部隊のハヤトから
「同じ瞳をした人間を二人見た」と
案内された先で
外人部隊の隊長で、現在は
「ジョスラン」と名乗っている
伯父を見つけます。
ソレイユが医者の卵と知った
ウルージは、彼の異父兄で病弱な
シナーンに引き合わせます。
二人とも、行方不明の叔母・
アデライードの生んだ子でした。
アデライードは既に死亡。
ラクダの群れに踏みつけられた惨い
最期だったと聞いて、顔を曇らせる
ジョスラン。
中世から続く名門、パトウ家特有の
青い瞳は「ラ・コンテス・ブリュー
=青い伯爵夫人」と呼ばれていました。
何故かその青が出るのは男ばかり。
稀に娘がそうだった場合、ある呪いに
よって「若くして無惨な死を遂げる」と
言われていました。
ソレイユも18歳になり、呪いを
解くために奔走していることを知り
協力するジョスラン。
シナーンをパリの医者に診せる
(そしてあわよくばパトウ家の
跡取りに)と強引に連れ出すソレイユ。
それを追ってきたウルージと
ジョスランに連れられたハヤトも
含め、舞台はパリへ。
ウルージとシナーンの異母姉で
除霊師のクルアーンや
謎の老婆グラン・マも交え
物語は核心へと迫っていきます。
アール・ヌーヴォーやオカルトの
流行など、19世紀末の
爛熟したフランス文化を背景に
運命に抗おうともがく者、
抗えずに恨みを抱える者との
対立が描かれます。
続きます。