昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

木原敏江『天まであがれ!』

『天まであがれ!』(75~)
沖田総司とヒロイン・こよりの
恋を軸にした、新撰組モノです。

試衛館時代から壊滅までを
史実をベースにオリジナルキャラも
交えて少女漫画風に描いた名作です。

まず前提として、この当時は
ベルばらブーム。

その影響で、西欧が舞台だったり
ドレスやレースひらひらの衣装が
当たり前だった時代に日本史、

それも幕末の新撰組視点で描いた
挑戦がまず素晴らしい。

どうしても野郎ばかりのむさ苦しい
話になるためか、会津藩の男勝りの
蓉姫が土方さんに惚れ込んだり、

たきぎ売りの最中に試衛館を
訪れたのが出会いという田舎娘の
こよりが

実は公家のお姫様で、数年ぶりに
会った兄・羽林中条風守は
長州藩の協力者という

ロミオとジュリエット展開で
昭和の読者を引きつけます。

とはいえ試衛館時代からの
つきあいなので、新撰組からは
「こよりんぼ」とあだ名つきで
可愛がられています。

あか抜けない田舎娘が
ちゃんと着飾ると美しい姫に
なるのも昭和の乙女のロマンです。

こよりには恋のライバルは
いませんが、風守に片思いする
公家の姫・るり子が

兄に大事にされてるこよりに
嫉妬して、何かといじめるのも
70年代作品らしい。

るり子はこよりを陥れようと、
こよりを通じて新撰組に志士たちの
会合の情報が伝わるよう企みます。

仲間がこよりのせいで捕えられたら
風守は妹を嫌いになるはず、という
目論みから

新撰組の一大捕り物、池田屋
事件が起きる流れになっています。

(しかし風守も池田屋に向かって
しまい、るり子は気が触れてしまう)

仲間を斬られた志士たちは
償いにこよりに協力を強制します。

この頃には既に総司は
胸の病が進行していて……。

基本的には史実に基づいて
いますが、総司の死の床に
こよりがいたり、

土方さんの傍らにぎりぎりまで
男装の蓉姫がいたりしますが
物語上の演出というよりは作者の
愛を感じます。

土方さんの死からのラスト
数ページのエピローグや
ノローグはただただ
素晴らしいの一言。

詳しくはここには書きません。
木原先生特有の美しい世界を
堪能してください!!

天まであがれ! 1 (秋田文庫)

天まであがれ! 1 (秋田文庫)