『千歳ヲチコチ』(10~)は平安時代を
舞台にした、風変りな虫愛ずる姫・チコと
真面目な貴公子亨の、迷い込んだ一通の手紙から
始まるほのぼの日常&時々ラブコメです。
ある日チコ(知子)が親友の登子あてに
手紙を書いたところ、風に飛ばされて
たまたま亨(とおる)の牛車の中に……。
手紙の内容に心魅かれた亨は
咄嗟に返事を書き、友人のイタズラで
女性を装って使いの者に渡します。
チコは喜んで、その相手を「秋風の君」と
名付け、いつ渡せるかもわからない
手紙を書き続けるのでした。
亨は名家の嫡男なのに奥手で真面目、
自分に自信がないタイプです。
この二人の恋が話の核なのですが
最終巻(8巻)まで出会いません。
むしろチコの視点から貴族の姫君の、
亨の視点から貴公子の生活が、
コミカルなテイストで描かれている
部分の方が圧倒的に多いです。
ある日、親友・登子(なりこ)が
婚活目当てに宮仕えを始めると宣言。
新嘗祭に呼ばれたチコは、あるトラブルを
解決するために前代未聞の行動に出ます。
それは「立って走る」こと。
※貴族の女性は基本、中腰のすり足で動く。
力尽きたチコはその場で寝てしまい、
周囲の心遣いで几帳で隠されます。
起こされて慌ててその場を離ようとしますが
すぐ近くで酔って悪夢を見ていた亨が
必死に彼女の裾を掴んでいました……。
退出する際に「いつか秋風の君に
渡したい」と身に着けていた手紙の
一通が亨の手へ。
このように「あと一歩で!」という
ニアミスが繰り返されます。
また、この物語は受身だったチコが
「秋風の君」を探すために外へ出て
寺詣でをしたり、宮仕えをはじめるという
成長の物語でもあります。
お寺に行ったからこそ、
後に重要キャラとなるイケメン僧・
春雪(しゅんせつ)と出会えたのですし。
亨も今一つ自信が持てずにいたのが、
宴の舞や、手紙の主探しをしているうちに
逞しくなっていきます。
二人の成長を見守りながら焦らされた読者は
遂にこの時が……!と感涙するほかありません。
折角ですので続けます。