『リングにかけろ』(77~)は夭折した
天才ボクサーだった父の夢を継ぎ、
人生をリングにかけようとする高嶺竜児&菊の
姉弟の熱き物語です。
04年にテレビアニメ化しました。
序盤は「父の夢を子が果たす」「母との約束」など
義理と人情の昭和の熱血スポコンですが
次第に「個性的な美形キャラが物理法則を無視した
豪快かつ華麗な必殺技で勝利する」
車田漫画のフォーマットが完成していきます。
最初の進化の兆候はやはりブーメランフックを
試合で初披露した回でしょう。
(コミックス8巻、電子版5巻)
河井武士「な……なにがあったんだ ねえさん!?」
河井姉「き……奇跡よ」
「ボクシングの歴史はじまって以来
おこりえなかった奇跡が今……
このリングという四角い荒野の上を
うなりをあげてかけぬけていった!!」
ブーメランフックの凄まじい威力を見た
河井姉弟のやり取りですが
この時漫画界にも「車田漫画」という奇跡が
誕生したのではないでしょうか。
実際、TVアニメではそれ以前のスポ根時代は
ばっさりカットされ、最低限の回想シーンで
済まされます。
(第一話は剣崎VS竜児の三度目の対決から)
確かに今の感覚からすると、当時の昭和感あふれる
ベタ展開はしんどい人もいるでしょう。
母親が再婚した相手は、酒とギャンブルとDVの
三重苦オヤジで初日から本性を露わに……というのも
70年代は夫の暴力は耐え忍ぶしかなくても
今はいくらでも対処法がありますからね。
(そういう事情だったからこそ小学生&中学生が
家出して他人の家で暮らしても許されてるわけです)
個人的には上京する際のサブタイトル
「テリブル東京」とか昭和的でたまらんのですが
電子書籍版だとまるっとカットされてる……。
台詞もかなり変更&カットがあるので
当時のコミックスを持ってる人は貴重ですよ。
剣崎と菊が出会った直後の呼びかけも
「おい女中!」→「おいメイド!」→「おお使用人!」
とコミックス、完全版、電子版で
変わってたり。
続きます。