※比喩表現としての「王子様」を語ります。
少女マンガにおける王子様の条件は
「線の細い美少年で優等生タイプで
皆(特に女生徒)の憧れ」
これは昭和でも平成でも変わりません。
まずは『キャンディ・キャンディ』の
「丘の上の王子様」
泣いているキャンディに「おチビちゃん
きみは笑った顔のほうがかわいいよ」と
微笑んだ、キルト姿にバグパイプを持った
少年です。
彼が何者かわかるのはずっと後なので
読者もキャンディも、そっくりなアンソニーに
王子様を投影します。
一条ゆかり『ティー・タイム』(77)で
「王子さま」と女生徒から呼ばれる早乙女紫苑は
日仏ハーフで女装したら双子の姉そっくり。
この辺りは温和な性格ですが、
クールな王子様もいます。
星野めみ『笑って!殿下』(81~)
クールなクラス委員長、優等生のイケメンメガネキャラ
日比野正樹、あだ名は殿下。
実は悲しい過去があるので「笑って!」と
タイトルについているわけです。
同じく殿下のあだ名があるのは
川原泉『笑う大天使(ミカエル)』(86~)の
ロレンス先生ですが、
こちらはモノローグなどで語られ、
直接そう呼ばれることはありませんでした。
これも70~80年代までの流行で
80年代半ばからは減っていきますが
90年代から復活してきます。
高屋奈月『フルーツバスケット』(98~)では
草摩由希を王子と崇めるファンクラブ
「プリンス・ユキ」が女生徒たちの間に存在しました。
この辺までは従来どおり優等生タイプですが
乙女ゲーなども含め、「王子」キャラが増えると
お約束を逆手に取った作品も出てきます。
八田鮎子『オオカミ少女と黒王子』(11~)
のように、王子キャラの性格がSだとか、
椿いづみ『月刊少女野崎くん』(11~)の
鹿島くんは典型的な王子様キャラなのに
女の子だとか。
ちなみに少年マンガだと
許斐剛『テニスの王子様』(99~)を真っ先に
思い浮かべる人も多いと思います。
少女マンガでは憧れの存在を
王子様と呼ぶことは当たり前ですが
少年マンガであえてタイトルにつけるセンスが
今更ながら天才的な発想です。
番長・スケ番・プレーボーイと絶滅危惧種も
増える中、「王子様」が更にバージョンアップして
増えていくとは不思議なものです……。