『彼方へ!』(75~)は
両親の再婚によって水泳部の
憧れの先輩・将と兄妹になった
少女・真幸(まゆき)の恋と
人生を描いた青春ロマンです。
目指してるオリンピックが
モントリオール(76年)
なのが時代を感じます。
「縦ロールの大人びた
先輩兼ライバル」
「様付けで呼ばれる
女生徒の憧れの男子生徒」
「突然、歳の近い異性と同居」
など、当時の流行を
取り入れながらも
少女マンガとは思えぬ
ドロドロ人間関係の方の
印象が強くなるのが
里中作品だなって……。
大雑把なあらすじは
父を三年前に亡くし、
母親と二人暮らしの
女子高生・真幸。
ある時、水泳部の憧れの先輩・
将(しょう)の父親と母が
再婚することに。
真幸は複雑な気分ながら
祝福しようとしますが、
将の両親を見る目は
どこか冷たく……。
やがて真幸は両親が長い間
不倫関係にあり、将の母は
それに疲れて出て行ったことを
知ります。
全て承知の上で、本心を
抑圧していた将は
ふとしたことから水泳部の
女性コーチと、酒の上の
過ちを犯してしまいます。
「責任を取る」台詞が出る
将もだけど、
自殺未遂するコーチもまた
どっちも真面目すぎる……。
更に二人は失踪。
真幸と将は本当に
血が繋がった兄妹の
可能性が高いと言われたり、
妊娠した母親は流産しかけるわ、
未熟児で生まれた子は脳に異常が
あって目が見えないとか散々ですが
真幸は全て受け入れて
水泳選手としても人間としても
強く成長していきます。
やがてコーチと将は
指導者と選手の関係に戻り
ひたすら特訓を重ねていた
ことが判明。
将と真幸は「例え血が繋がって
いても構わない」と愛を貫く
ことを決意するのでした。
※真幸の亡父と将父の血液型は
同じなので、DNA鑑定が存在
しない当時では、本当の父親が
どちらか不明のままです。
70年代青春ドラマが
「ひたむきで真面目」なイメージが
あるのは里中作品の影響かも。
人生とは、愛とは何か
いつも真面目に考えてる
モノローグが特徴ですが
ポエムがかったモノローグは
……別の意味で味わい深い
ものがある……。