『乙嫁語り』(08~)は
19世紀後半の中央アジアを舞台に、美しい花嫁
(=乙嫁)たちの日常や恋模様を描いた
作品です。
エスニックな刺繍や食べ物・小物・背景などを
作者が心から楽しんで描いているのが伝わって
ほっこりします。
一番登場回数が多いのは少年婿のカルルクと
年上の嫁アミルのおねショタ夫婦ですが
イギリス人のスミスさんがあちこちを旅し、
人々の話を記録していく物語でもあるため
視点や場所は1巻ごとに変わります。
パンを作ったり、狩りに出たり、何気ない
日常回があったかと思えば
アミルの実家が、一度嫁に出したアミルを
よその部族に与えるために連れ戻そうとし、
街中での抗争になったりもします。
アミルの友人、パン作りは巧いが性格は
不器用なパリヤさんが悩みつつも婚約者と
うまくいきそうな流れだったり。
(がんばれパリヤさん!って応援したくなります)
4巻のみ登場の元気いっぱいの双子の乙嫁
ライラとレイリ&幼馴染のサームとサーミの
兄弟婿の婚約に至るまでや結婚式。
7巻のみ登場の富豪の嫁アニスと姉妹妻
シーリーンの百合カップル、
唯一アンハッピーだった薄幸の乙嫁
タラスさんが再びスミスさんと再会したりと
話はどこへ行くかわかりません。
基本的にはほのぼのやハッピーエンドが
多いお話ですが
決して楽園ではなく、過酷な寒さや
シビアな環境なども描かれます。
この時代、ロシアが南下への野心を見せていたりと
平穏な日常がいつまで続くかわからないという
危ういフラグも出ています。
しかしこの作者が悲劇ENDはないでしょうし、
超絶画力による繊細かつ美麗な絵で
中央アジア世界を存分に楽しめる
作品だと思います。
個人的に、スミスさんにエイホン家の人々が
見せてくれた、一族に代々伝わる
刺繍のエピソードが好きです。
物言わぬ女性たちが生きた証であり、
これからも一族の大事な生活の
一部として大事にされていくのだと思うと
ちょっと泣けました。
(パリヤさんの布支度の時にも出てきますね)

- 作者: 森薫
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