昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

大和和紀『イシュタルの娘 ー小野於通伝ー』その1

『イシュタルの娘』(09~)は実在した
安土桃山~江戸時代の女文人・小野於通
(おの おつう)の生涯と
恋愛を描いた長編作品です。

※イシュタルはメソポタミア神話の
女神で、明けの明星(=金星)
戦国時代という闇の世界からの夜明けを
告げる存在という比喩。

生まれこそ美濃の地侍の娘ながら
小野小町小野篁を祖先とする於通は
幼い頃から「天眼」の能力があり

普通の人には見えないものや先の未来を
見ることができました。

そのため織田信長の背後に黒竜を見たり、
秀吉や家康が光り輝いて見えます。

 そして運命の恋人、近衛信伊に出会ったのも
信長の元ででした。(当時の名前は信基)

「調度も着物も茶碗も……
美とは まことにむだと思えるものの中に
存在いたします」

「於通はそのむだを あえていたす人の心が
すばらしいと思うのです」

美とは何か、様々なものの中に美を見る於通ですが
世は戦乱のさ中、織田信長は討たれてしまいます。

於通と母は縁のある公家の九条家に身を寄せ、
そこで元関白・九条稙通(たねみち)の弟子として
教養を磨かれます。

その際、信濃まで共に旅をし、謎の修験者
「飯綱の太夫」(いづなのたゆう)と出会い、
忍びの「ぬばたま」をつけてもらいます。

(この時、真田幸村・信之の兄弟とも出会います)

太夫とぬばたまはいわばチート能力ですが、
これにより史実通りであっても「ご都合主義」と
言われかねない展開を押し通すことが出来ました。

史実の方がフィクションっぽいのがすごい。

しかし余程の時しか頼らず、普段の於通は
自らの才能と才覚で運命を切り拓いていきます。

当代きっての教養人・細川幽斎にも才能を認められ、

秀吉の正妻・於ねの祐筆(ゆうひつ=手紙を代筆
する役職)になったり

花見の際の女性たちの着物を見立てる
総合プロデューサーの役割をしたり。

仏画や絵も、今に残っています。

信長・秀吉・家康と戦国で最もメジャーな3人と
繋がりがあり、真田とまで縁があるという
大河ドラマ向きな人なのにあまり知られていない謎の女性。

この『イシュタルの娘』をきっかけに、
もっとメジャーな存在になってほしいと思うのです。

  次回に続きます。

 

みさき速『特攻天女』その2

この作品は祥が中心ですが、

もう一つの物語の核として、瑞樹・高村・
遊佐が過去にしていた「悪事」があります。

何をしたかはあえて書きませんが、
確かにドン引きするような内容です。

もうホント、お前らよく主人公側に
いるよな……(呆れ)

しかし、それを知っても簡単に嫌いには
なれないからこそ祥もアキラも苦悩します。

最強の女王さ……いやお嬢様で、頼りになる瑞樹。

乱暴で女好きだが、祥には本気な高村。

したたかで油断ならないが、面倒見のいい
ところもある遊佐。

愛すべきキャラだからこそ、思い入れの深かった
読者は祥やアキラと同じ気持ちになったことでしょう。

一応、瑞樹が病んだ理由も高村が荒れた事情も
出てはいるので、

それが他人を傷つけていい免罪符にはならなくても
多少なりとも考慮の余地はあるでしょう。

遊佐のバックボーンだけが語られず、
謎のままでした。

瑞樹はその後、悲願だった愛する人がいる国へ
行き、彼の目の前で地雷を踏んで死亡します。

それは天罰だったのか、平和な日本で暴走族やって
修羅場をくぐった気分になっていても

本物の戦場の前ではゴッコ遊びにすぎないという
皮肉だったのか……。

遊佐は瑞樹を追いかけて出国したものの、
彼女の死を知って薬に溺れて廃人と化し、

高村の異母兄・直紀が見つけて日本へ
連れて帰り、祥とアキラが献身的に介護するも
またいなくなってしまいました。

直紀が作品中最もヤバいキャラですが、
この件に関してだけは素直にありがとう!!

高村だけは日本に残り、祥と結婚します。
それが『特攻天女』最終回エピソードです。

結婚式の際、遊佐が来ている気配を感じますが、
当の本人は地球の裏側で倒れていました……。

どこの国だってニューイヤーを楽しく大事な人と
過ごしてるだろうに、どこぞの裏路地で
一人野垂れ死にとか、なんて似合いの死に様だ
大バカ野郎…………!!!!!(号泣)

かなり人を選ぶ作品ではありますが、
私は大好きです。

井沢くんとかアキラとか、そのうちまた語る予定です。

 

 

 

あけましておめでとうございます

今年もマンガやアニメ・特撮の話を
熱くテンション高く語っていきたいと思います。

アラフォーのオタクのおばちゃんが
戯言を垂れ流しているだけですが

マンガやアニメを選ぶ時の参考になったり、
楽しんでいただければ幸いです。

皆さまにとって幸せな一年でありますように!

 

 

みさき速『特攻天女』その1

特攻天女(95~)
レディース「夜桜会」の14歳の特攻隊長
和泉祥(いずみ しょう)を主人公に
時にドタバタラブコメ、時にドロドロした
人間ドラマを描く一風変わった族モノです。

今日は祥の誕生日兼結婚記念日なので
語ってみます。

祥は線の細いイケメンとケンカが大好きという
真っ直ぐでちょっとおバカなヤンキー娘。

(人質にされ、この子を傷つけたくなかったら……
と脅され、屈しようとした高村に)

「あたしはモノじゃねぇぞ
ちっとばかしキズモンになったぐれーで
価値が下がってたまるか!!」

と、突きつけられた刃に自ら顔を押しつけて
頬とタンカを切る男前な一面もありつつ、

イケメンを前にすると「住所と電話番号っ!」と
必死にナンパするような一面もありました。

※当時、携帯電話が出回り始めた頃ですが祥は持ってません。

序盤は祥がイケメンに惚れてはフラれるのに
全く好みじゃない、男ばかりの暴走族「鬼面党」の頭・
高村大に惚れられて……というラブコメ部分もありました。

この高村と祥の他に

祥を溺愛する「夜桜会」頭・天野瑞樹や
彼女にフラれて出奔していた
「鬼面党」特攻隊長・遊佐明仁

「鬼面党」の良心にして副党首・井沢吉成と
男装してまでも高村の傍にいたい
親衛隊長・矢野アキラが
この作品のメインキャラです。

個人的に遊佐初登場時、アキラを
女だと見抜いてキスしたため

アキラの正体がバレることを何としても
防ぎたい祥が瑞樹を動かし、

遊佐が高村にキスする=ホモと
皆に思わせるエピソード大好きです。

この時の二ページ見開きの高村の表情には
大爆笑しました。

平和な話は本当にほのぼのなんですよ……!
こういう回は短編で

「族狩り」「月下仙女」編など長編は
内容もかなり暗く重くなります。

この当時、暴走族・ヤンキーの抗争を描いた
作品はかなり多く

通常はアクションやケンカが
メインで描かれるものですが、

この作品の特色として他者に執着する
だいぶドロドロした愛憎劇が主になります。

語りきれないので次回へ続きます。

 

特攻天女 1

特攻天女 1

 

  

 

 

 

大和田秀樹『ムダヅモ無き改革』

『ムダヅモ無き改革』(06~)は主人公・小泉
ジュンイチロー総理が外交を麻雀で解決したり、
世界の首脳+ローマ法王の連合軍で
月の裏側に隠れていたナチスの残党と戦う
熱い麻雀バトルマンガです。

10年にはOVA化しました。

コロコロコミックでは侵略に来た宇宙人と
小学生の主人公が子供向けホビーで対決して、

負けたら諦めて帰るなんて展開はよくあること
ですから、その麻雀版という認識で間違いないです。

ブッシュ大統領プーチン大統領など、一度は
戦った相手が頼もしい味方となり、新たな強敵に
共に挑むと書くと、すごく熱血少年マンガっぽい。

 小泉総理の必殺技は「国士無双十三面」
ライジング・サン)とルビが振られます。

車田マンガ特有の黒い吹き出しと、二ページ見開きで
相手がぶっ飛ぶ演出も多用されていました。

麻雀のルールを知らなくても問題ないですが、
マンガやアニメ・国際情勢や政治の情報は
あった方が楽しめます。

個人的に『ガラスの仮面』の紅天女の長台詞が
「わたしは……合衆国大統領」になってたり、

ちゃぶ台返しに“イッテツバスター”とルビが
振ってあったのがとってもツボでした。
(『巨人の星』の星一徹から)

念のため書いておきますが、タイトルの元ネタは
小泉内閣のスローガン「聖域なき構造改革」です。

名前はカタカナにしたりと微妙に変えてありますが
かなり本人そのままで、よく怒られなかったなと
思う場面も多数。

麻生タローさんのスナイパー設定とかクリスチャンとか
ちゃんと調べた上で、大真面目にふざけて
いるのがわかります。

(麻生さんは若い頃、クレー射撃の選手としてオリンピックに出場)

この作品は二部構成になっていて、二部では
自衛隊の特殊部隊が鳩山総理(当時)や
蓮舫土井たか子と予算を巡って対決したり

尖閣諸島を賭けて、ダライ・ラマたちと共に
蘇った毛沢東率いる中華ソビエトと麻雀で戦います。

 マンガはやはり「そんなのありか!?」と度肝を
抜くくらいが面白いですよね!いいぞもっとやれ!!

 

ムダヅモ無き改革 1巻

ムダヅモ無き改革 1巻

 

 

『ロミオの青い空』

ロミオの青い空(95~)リザ・テツナー
児童文学『黒い兄弟』を原作にしたアニメです。

※原作とはだいぶ設定が異なります。

11歳の少年、ロミオは火事に遭った父の
治療費を稼ぐため故郷のスイスの村から
人買いに売られ、イタリア・ミラノの
煙突掃除夫になります。

過酷な仕事と生活、町の不良少年たち
「狼団」から敵視されながらも、
同じ煙突掃除の少年たちと「黒い兄弟」を結成し
強く生きていく物語です。

「黒い」の意味は煙突掃除のすすで真っ黒に
なるからです。念のため。

子供向けの『名作劇場』枠でありながら
美少年のキャラクターデザインで、

ロミオの親友、アルフレドの貴公子ぶりと
ピュアでまっすぐなロミオとの
深い関係性は当時、熱烈な女性ファンを
生みました。

金髪碧眼の美少年で、優しく物静か。

読書を好み、上品な物腰のアルフレドは
どう見ても売られるような貧民ではなく
訳ありなのは明らかでした。

実際に貴族の跡取りであることが判明したり

黒い兄弟のリーダーとなるカリスマを備えた
非の打ちどころのない美少年。

ロミオも彼を尊敬し、頼りにしているのですが
ルフレドの方もロミオの純真さに救われているという……。

しかしその高いスペックは、彼の早すぎる死を
より悲劇的なものにするフラグでした(号泣)

ルフレドの親方に当たる男は非道な性格で
彼を徹底的にこき使い、遂に……。

ロミオ役の折笠愛さんは当時『ガンダムW』で
カトル役、「狼団」NO.2のリナルド
同じく『W』のトロワ役、中原茂さん。

狼団リーダー、ジョバンニが檜山さんだったりと
当時の流行りを意識したキャストで
その辺りもヒットの理由かと思います。

とはいえこの作品が屈指の名作であることは間違いありません。

また、声といえばアルフレドの気高い貴公子ボイスは
藤田淑子さんでなければありえませんでした。

藤田淑子さんのご冥福をお祈りします)

OP『空へ……』も本当に素晴らしい曲です。
機会があればぜひ一度観てください!

 

ロミオの青い空 DVDメモリアルボックス

ロミオの青い空 DVDメモリアルボックス

 

 

ヨシノサツキ『ばらかもん』その2

ばらかもんは半田先生だけでなく
若い登場人物の多くが変化や成長を見せる
物語でもあります。

スプラッタを描いていた漫画家志望の
タマは作風を変え、ホラー風味は残しつつも
ほのぼの日常もので賞を取り、

父親が酒屋を廃業することで
美和が(一応は)目標を定めます。

船乗りに転職予定の父親を心配するあまり
なるの前で涙ぐんで、

「父ちゃんがいなくなったら
私、どうすればいい?」
と言ってるシーンは萌えました。

ヒロシは料理人の道を選んで島から
東京へ向かい、

神崎くんはテレビタレントとしてデビュー、
辛口のキャラで人気者になります。

そしてなるは父親との距離が縮まりました。

序盤、なるはお祖父ちゃんと暮らしている
ちょっとおバカで元気な娘、以外のことは明かされず

父親は船乗りで島にいないこと、

帰ってきたらなるが熱を出してしまうため
それすらも回数が減ったことが大分後になって
分かります。

心配した半田先生がいつの間にかなる父・
優一郎と文通する羽目になり

最終巻では先生の元に携帯電話が送られてきます。

(本来はなるにでしたが、学校には
持って行けないので普段は半田先生宅に)

父娘の仲は遠いようで近く、周りがやきもき
しなくても深く繋がっているのは確かですが

心配してる分、半田先生となるの
仲も深まっているのが微笑ましい。

アニメでは小学生のキャラは子役が担当しており、
なる役、原凉子ちゃんの演技は素晴らしいの一言。

なるが東京に一時戻った半田先生に電話する際の
健気なシーンには涙出たよ!!

半田先生役・小野大輔さんは最終回アフレコ後に
子供たちからありがとうの手紙を貰って
泣いてるところを

隣のスタジオにいた『ハイキュー!』の
メンバーに見つかってからかわれたと
DGSで言ってましたね。

ばらかもん』は制作現場もほのぼのか!

ラスト近く、川藤くんがヒロシに送られてきた
半田先生の画像を見て「ははは康介 短い春だったな」
と言いつつ去っていく嬉しそうな場面が大好きです。

新作も楽しみにしております!