『王様の仕立て屋』(03~)は、
イタリア・ナポリで急ぎ仕事を請け負う
日本人の仕立て屋・織部悠(おりべ ゆう)を
主人公にしたコミカルな雰囲気の
洋服マンガです。
その専門知識や技術で、客の人生を幸せな
方向に持っていく、いわゆる「職業モノ」。
青年誌連載作品だと、ジャンル・性格がどうあれ主人公は
・組織に頼らない一匹狼。
・どんな偉い人にも媚びない。
・でも腕は確かで、一目置かれている。
・人脈豊か。
という勤め人の理想を具体化した
タイプですね。
織部さんは伝説級の親方の弟子ですが
日本人な上に若すぎて、ナポリの
サルトには受け入れてもらえず
特急仕事ばかり回ってきます。
性格は飄々として温厚、反骨精神と職人気質の
持ち主で
のっぴきならない事情を抱えたお客には
必ずピンチを救う一着を作ってくれます。
※かなり高額なため、客の方も一世一代の
覚悟を求められます。
サラリーマンや学者の勝負服、マフィアの跡目に
相応しい装いなど、この作品では男のお洒落は
「他者に認められるもの」である場合が多いです。
恋愛成就や家族の再生話、歳を取った人にも
優しい新たな一張羅などエピソードも様々で、
ほぼハッピーエンド。
職業モノの特徴として、多数の薀蓄や
仕事に対する心構えを語る際
話の流れに沿って、読者にどれほど説得力をもって
響くかというのは重要です。
それが秀逸だからこそ、長く続いているわけですが
作者の相当な知識量のインプットが
読んでいて感じられます。
とはいえコミカルなやり取りや多数の
パロディなどが多用された、
気楽に読める一話完結のお話です。
それにしても美女揃いのブランド・ジラソーレ社や
織部さんをライバル視するツインテ娘ラウラなど
女性キャラは多いのに、織部さんとの恋愛フラグが
全くないのも珍しい……。
女性誌連載だった『繕い裁つ人』はお客の
大半が女性で、お洒落は自分のためにするもの
でしたので、その違いを楽しむのもいいですね。
王様の仕立て屋〜サルト・フィニート〜 1 王様の仕立て屋?サルト・フィニート? (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 大河原遁
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