昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

大河原遁『東坡食譜』

『東坡食譜』(とうばしょくふ 17~)
中国は宋の時代の天才詩人、蘇東坡(そとうば)を
主人公にした食べ物漫画です。
全一巻で5話収録。

(一話完結の不定期掲載だったので
コミックス化した年代を書いています)

同作者の王様の仕立て屋シリーズを
ご存知の方なら説明が早いですが

コミカルで軽妙な語り口ながら
博学な知識の上に成り立つ作品です。

第一話は蘇東坡が考案したと言われる
豚角煮=東坡肉(トンポーロー)を作りつつ

蘇東坡の性格や置かれた環境、
当時の時代背景などが描かれます。

6代皇帝神宗の時代、蘇東坡(本名蘇軾)は
王安石の改革に反対し、政争に敗れて獄中へ。

死罪になる同志も多い中、なんとか許され
黄州という貧しい田舎へ左遷されます。

しかし未だ影響力のある存在で、遠く都から
刺客が送られてきて……、という第一話。

蘇東坡は飄々とした初老のおじさんで
刺客が悪人でなく、真面目な性格なのを見てとると

当時はネコの餌扱いの豚肉で作ったと説明しつつ
(蘇東坡が柔軟な考えの食いしん坊なのが分かる)

今時の貴族は羊肉が最高位という
決まりを疑いもせず、こんな美味しい
ものにも気付かないと皮肉ります。

刺客の男は一本気でもバカではないので
(これは俺が一方的な情報を鵜呑みにしてると
言ってるのか……?)と含みに気づきます。

この後、男は蘇東坡からの頼みで
ある相手のところへお使いに行きます。

政治的にはライバルでも、ちょっとしたやり取りから
真意を汲み取って相手のために動く関係が
実に粋です。

刺客の男=晁蓋は実は水滸伝にも登場する
有名キャラですがそれは作者のお遊び。

特に歴史に詳しくなくても、出世コースから外れた
いい感じにくたびれたしたおじさんが

困難を工夫や発想の転換で乗り切る
(そこに食べ物が絡む)話なので
難しく考えずに楽しんで読んでください。

意外と周囲の人望は厚いのもお約束です。

あとがきに中国史はまた挑戦したいと
書かれてました。楽しみに待っております!!

東坡食譜 (ヤングジャンプコミックス)

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