『東坡食譜』(とうばしょくふ 17~)は
中国は宋の時代の天才詩人、蘇東坡(そとうば)を
主人公にした食べ物漫画です。
全一巻で5話収録。
(一話完結の不定期掲載だったので
コミックス化した年代を書いています)
同作者の『王様の仕立て屋』シリーズを
ご存知の方なら説明が早いですが
コミカルで軽妙な語り口ながら
博学な知識の上に成り立つ作品です。
第一話は蘇東坡が考案したと言われる
豚角煮=東坡肉(トンポーロー)を作りつつ
蘇東坡の性格や置かれた環境、
当時の時代背景などが描かれます。
6代皇帝神宗の時代、蘇東坡(本名蘇軾)は
王安石の改革に反対し、政争に敗れて獄中へ。
死罪になる同志も多い中、なんとか許され
黄州という貧しい田舎へ左遷されます。
しかし未だ影響力のある存在で、遠く都から
刺客が送られてきて……、という第一話。
蘇東坡は飄々とした初老のおじさんで
刺客が悪人でなく、真面目な性格なのを見てとると
当時はネコの餌扱いの豚肉で作ったと説明しつつ
(蘇東坡が柔軟な考えの食いしん坊なのが分かる)
今時の貴族は羊肉が最高位という
決まりを疑いもせず、こんな美味しい
ものにも気付かないと皮肉ります。
刺客の男は一本気でもバカではないので
(これは俺が一方的な情報を鵜呑みにしてると
言ってるのか……?)と含みに気づきます。
この後、男は蘇東坡からの頼みで
ある相手のところへお使いに行きます。
政治的にはライバルでも、ちょっとしたやり取りから
真意を汲み取って相手のために動く関係が
実に粋です。
刺客の男=晁蓋は実は『水滸伝』にも登場する
有名キャラですがそれは作者のお遊び。
特に歴史に詳しくなくても、出世コースから外れた
いい感じにくたびれたしたおじさんが
困難を工夫や発想の転換で乗り切る
(そこに食べ物が絡む)話なので
難しく考えずに楽しんで読んでください。
意外と周囲の人望は厚いのもお約束です。
あとがきに中国史はまた挑戦したいと
書かれてました。楽しみに待っております!!