昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

池辺葵『繕い裁つ人』

繕い裁つ人(つくろいたつひと 09~)
は、祖母から受け継いだ下町のオーダーメイド
洋裁店の二代目・南市江と周囲の人々との
服にまつわる穏やかな物語です。

15年には中谷美紀主演で実写映画化しました。

序盤、市江(いちえ)の作る洋服を卸して
ほしいという、大手百貨店に勤める若い男性
社員・藤井さんとのやり取りを通じて彼女の
スタンスが描かれます。

「夢見るための洋服を作ってるんです」

「生活感出してたまるもんですか」

レトロ美しいふんわりしたワンピースや
繊細なドレスを作っている割には
本人は頑固で辛口。

藤井さん「頑固じじいって感じですよ」
友人の芳乃「躾のゆきとどいた狂犬みたいな人」

……ひどい言われようだ……。

とはいえ市江の作る服は美しいだけではなく
着る人の体型や事情に合わせたり

祖母の代から長年にわたってお客と
「一生添い遂げられる」服を目指すなど
およそ今時とは思えない感覚ですが
ありえないからこそ尊い……!!

藤井さんは市江の服と作る姿勢に惚れ込んでは
いるものの、結構厳しいことも言います。

「もっと言葉を選んだ方がいい」

「単に挑戦するのが怖いんじゃないんですか」

しかし市江の服に注文を付けている客を前に
「あんた正気か これはこれで
完璧なフォルムを造ってるんだぞ」
喰ってかかったりします。

市江が読んでいた本から、彼女が望んでいた
少量でもオリジナルの生地を作ってくれる
お店を調べてきてくれたりと
アメとムチフォローも完璧です。

二人のじれったい関係性と淡い恋愛フラグの他にも
夫婦、親子、先輩への尊敬、友情など
さまざまな形での服にまつわるエピソードが
出てきます。

服に対して愛着を抱く人、シフォンとか
モスリンの単語だけで萌えられる人、
優しい物語が読みたい人におススメです。

また、この作品を読んでいると、
Papa Told Meの知世ちゃんや北原さんの
服やお洒落への思い入れを語るシーンが
頭をよぎります。

『Papa~』好きな人はきっと
相性がいいと思いますよ。

繕い裁つ人(6)<完> (KCデラックス)

繕い裁つ人(6)<完> (KCデラックス)

 

 

繕い裁つ人

繕い裁つ人