前半は80年代初期、
後半は平成初期の作品を
集めた短編集です。
表題作の
『マリン・ブルー・マリン』
(82~)は、80年代の
イギリスが舞台。
簡単なあらすじは
主人公のウィルは
シスコン気味の青年で
海軍の重要な地位にある
父とはずっと不仲だった。
ところが姉が父の部下と
結婚すると知り、ショックで
家を飛び出す。
酒場で酔い潰れてしまった
ウィルは、翌朝裸で知らない
男から「一夜を共にした」と
言われて衝撃を受ける。
(本当は何もなかった)
そのキザなヒゲの男は
何故か名乗らず「教授」と
自称する。
ウィルは教授に半ば
脅される形で一日
一緒に行動することに。
ところが怪しい連中に
二人とも連れ去られてしまい……。
話の核は「親と不仲の子供が
親が原因で誘拐されるが、
色々あって脱出後には
親子仲は好転する」という
王道のもの。
その味付けに
IRA(アイルランド独立を
掲げるテロリスト)とか
ネルソン提督のエピソードが
出て来るのが河惣作品です。
詳細は言いませんが
「教授」ことダグラス・
ブルー・ジェニングス大尉は
ウィル姉の婚約者の親友で
父の信頼篤い部下。
ウィルやウィル父の人となりを
読者に見せる&脱出を助けるなど
便利な立ち位置のキャラです。
続編にあたる『ポーラ・スター
&サザン・クロス』(84~)
にも登場。
今度は海軍士官学校に入学した
ウィルを厳しく鍛える教官役。
ウィルの恋の相手である
年上の金髪美女が
エリザベス・ローズ・
フィッシュガード。
戦闘機シー・ハリアーを
乗りこなす空軍大尉、
ダグラスとは共にフォークランド
紛争に従軍した戦友、
英国きっての財団の跡取りで
通称「女王陛下」。
「主要キャラのスペックは
盛りに盛る」キャラ造形は
この頃から今も健在です。
後にダグラスと揃って
『ツーリング・エクスプレス』
シリーズにも登場します。
ウィルの成長物語でもあり、
エリザベスが一つの夢に
終止符を打つ物語でもあり、
東側スパイに堕ちた男の
悲劇が描かれるという
短編ながら濃い話です。
続きはまたそのうちに。