昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

萩尾望都『王妃マルゴ』その4

ユグノー戦争は世界史の教科書では
数行程度の扱いですが

プロテスタントカトリックとの
殺し合いに翻弄される人々を描いた
この作品を読めば

アンリ4世が出した、信仰の自由を
保障する「ナントの勅令」の
尊さがわかります。

アンリ4世はマルゴにとっていい夫とは
言えない、女好きの困った男でしたが
王として、人としては良い方でした。

ギーズ暗殺を聞いたマルゴが
ジャックに「お前も(アンリ3世を)
呪うのよ!」と取り乱したり、

カトリーヌ母后の死に、ナヴァルの妹
カトリンが「死んだからって許さない!
お悔やみより呪いよ!」と叫んだり
してるのに

ナヴァル王アンリは「お悔やみの手紙だ」

敵は全て排除すべき!と極端な主張ばかりの
中で、怒りや恨みに流されない稀有な人物でした。

性欲が絡まなければ人格者なのが
面白いところです。

それが人間らしさなのかも……。

国王アンリ4世になっても変わらず
女性問題で周囲を振りまわすのでした。

でもジャックから預かったみどりの指輪を
マルゴに返したシーンに心から感謝したのは
彼女だけではありません。読者もです。

ジャックはアンリ3世の遺言でナヴァルにより
ひそかに放免された後は「サパン」と名乗って
だいぶ後にマルゴと再会を果たします。

第一話でマルゴが貰い、メアリ女王の指輪や
ラ・モルの髪などを入れていた「愛の箱」に
みどりの指輪を入れて渡し、サパンが受け取る
シーンはしみじみします。

全8巻、読み返してみるとすごい情報量と
キャラの人間模様が圧巻です。

支配的な母、カトリーヌ母后と
マルゴの母娘関係、

シャルル9世とアンリ3世の兄弟の確執、

子供時代のアランソン公はちょっと
パタリロっぽい……。

マルゴを精神的サンドバックに
していたカトリンが結婚後は
マルゴと似た立場になって
後悔するのが切ない。

ダイアナ様は本当に謎の存在感のある
キャラでしたね。

萩尾先生、壮大な美しい物語を
ありがとうございました!!

王妃マルゴ -La Reine Margot- 4 (マーガレットコミックスDIGITAL)

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