『メタルK』(86~)は両親を
殺され、自分も火をつけられて
全てを奪われた少女・
冥神慶子(みょうじん けいこ)が
自らをサイボーグ化し、全身凶器となって
復讐を果たそうとする物語です。
※作ったのは伊郷瑠(イゴール)という
慶子の父親に恩義のある、
忠実なマッドサイエンティスト。
「あなたは私の蜘蛛の巣に捕らわれた毒虫。
残るは死だけ……」
このセリフと共に美女の顔と体が
どろりと崩れ、機械の姿が出てきたり
肌が硫酸となって相手を溶かすなど
衝撃的でグロテスクな場面の連続で
規制の緩かった当時のジャンプ作品の中でも
一際異彩を放っていました。
グロいシーンなら『北斗の拳』や
『ブラックエンジェルズ:』にもありますが
北斗にせよブラックエンジェルズにせよ
悪人の死によって普通の人々が救われるのが
カタルシスを生んでいました。
復讐を果たしても更なる地獄が……という
誰も救われない展開が、この作品に
独特の湿度を生んでいたのかも。
序盤、慶子の復讐相手は婚約者だった兵頭勲と
二人の共犯者たちと思われていました。
しかし彼らは「組織」(ユニオン)こと
またの名を「薔薇十字団」(ローゼンクロイツ)の
一員でしかなかったのです。
薬品会社の社長だった慶子の父親が
勲を探偵に調べさせた際に発覚、
婚約を解消される前に一家を抹殺し
会社を乗っ取ったことが明かされ、
組織そのものに戦いを挑むことになります。
勲の情人・玲花だけは組織と無関係でしたが
この人はこの人で、慶子を狙撃して以来
やみつきになったと、
人狩り(マンハント)として月に一度、人間を
無人島に連れてきては狐面を被せて追い回し、
殺しているサイコっぷり。
後半に登場する、組織と敵対する青年・宇田川優が
瀕死の重傷を負って同じくサイボーグになり
共に戦う……という辺りで終わっています。
エッセイマンガ『連載終了!』にも
経緯が描かれてますが、本当に勿体ない。
オカルト、バイオレンス、エロス、ダークヒーローと
いった単語が好きな人にはたまらん作品です。