昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

河惣益巳『風の城砦(カスバ)』その2

舞台がパリへ移ると、ソレイユの
呪いを解く方向に話が進みます。

容姿にも才能にも恵まれ、
本人も莫大な資産家で、婚約者は
イケメンで誠実、権力も持ってる。

そんなハイスペック伯爵令嬢でも

「20歳前後になったら
惨たらしい死を迎えるらしい」と

身内に気味悪がられ、社交界
面白半分の茶飲み話にされて
いては心休まる時がありません。

しかもオカルトの専門家を呼んで
呪いを解こうとすると仕掛けで
大ケガしたり、

悪霊がハヤトに取り憑いて操り、
斬り殺されそうになったり

教会の神父に唆された村人たちが
ソレイユを魔女扱いして集団で
襲ってきたりと、何度も
危険な目に遭います。

普段、凛々しくクレバーな彼女も
時に婚約者や伯父に弱音を吐いたり
泣きたくなるのも当然でしょう。

それでも諦めないと泣きながら
言うのが偉いよ……。

ネタバレすると呪い自体は存在せず
「一番怖いのは生きた人間」
というオチなのですが、

ソレイユの最大の敵対者だった
祖母が一番の被害者だったと判明したり

シナーンの父親が意外な人物だったり、

呪った張本人が救い主になったりと

思わぬどんでん返しや裏切りに
読者は声を上げて驚くことになります。

また、この作品はソレイユの
物語であると同時に

中世から続く旧家・パトウ伯爵家の
人々の人生も描いています。

ジョスランはメイドと駆け落ちした後、
新天地アメリカで妻子を亡くし
外国人部隊に身を投じていました。

パトウ家以外のキャラである
ハヤトも詳しくは語られませんが
西南戦争の生き残り。

アルビオンも英国出身で元は
外人部隊に所属していました。

皆が皆、過酷な人生を送っているのですが
何があっても諦めずに運命を切り拓いていくと
いう強いメッセージ性を持った名作です。

ウルージはさぁ……
(ネタバレなので言わない)

ところで古いフランス映画好きだと
仏領アルジェリアはかなりの
ロマンを感じるようです。

ジャン・ギャバンの『望郷』とか。

日本でも昭和の名曲『カスバの女』とか
森茉莉のエッセイでも単語が出てきますね。

風の城砦(カスバ) 2 (白泉社文庫)

風の城砦(カスバ) 2 (白泉社文庫)