昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

手塚治虫『MW』その2

毒ガス漏洩事件は揉み消され、
真相は長く謎のままでした。

結城は隠蔽に関わった人々に
近づいては破滅に追いやり、

ついでに周囲の人まで巻き込んで
利用し、使い捨てます。

しかし彼の真の目的は
「自分の人生を狂わせた
奴らへの復讐」では
なかったのです。

「俺はただMWが欲しいのさ」

大規模に、世界中の人間に
使ってみたいと言う結城。

「なぜって理由なんかないよ
やってみたいだけだよ」

犯罪の片棒を担がされることも
渋々受け入れていた賀来ですが

流石にこの台詞を聞いた後は
神父を辞め、結城と全面対決を
決意します。

そして結城は次第に復讐の本丸に
近づいていくのでした……。

 解決法は結構力技ですが
最後には衝撃のラストが
待っています。

 

この物語は時代背景を知ると、
より興味深いです。

当時、コーラやチョコレートに
毒を入れてその辺に置いておく
無差別殺人が何件か起きています。

「動機なき殺人」は当時テーマとして
よくフィクションで描かれていて
怪奇大作戦16話もその一つです。

結城のターゲットの一人である
「中田栄角」が国会で
「記憶にありません」とすっとぼけるのは
ロッキード事件を、

結城が毒ガスを浴びた後遺症で
時折発作を起こし、苦しむシーンは

ジュリーが三億円強奪事件の犯人で
不治の病で余命幾ばくもない美青年を
演じたピカレスクドラマ
悪魔のようなあいつ(75年)
彷彿とさせます。

 身代金誘拐も挙句の殺人事件も
結構ありました。

結城が手駒として利用した中には
過激派と交流のある作家や
活動家もいました。

口だけは立派に革命だの何だのと
言ってるのに、結城のような
何の志もない殺人鬼に使い捨てられると
いう皮肉も効いています。

在日米軍基地でテロの最中なのに
日本の警察が手出しできない展開も
何か思うところあったんだろうな……。

昭和中期頃の、発展に向かいつつも
裏側の昏い一面を切り取った
今なお色褪せない名作です。

この話にBL要素という、作者には
初挑戦のジャンルまで混ぜ込んでくる
手塚先生はやはり神……。

MW 3

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