昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

車田正美『SILENT KNIGHT翔』

『SILENT KNIGHT翔』(92~)
命の根源(ルーツ)に目覚めた戦士
サイレントナイトの少年、翔が
人類粛清を目論む神人類と戦う物語です。

個別のプロテクターをつけた能力バトル、
戦士には強さで階級があるなど

聖闘士星矢が終了して間もない
時期に発表されたこともあって
「焼き直し」「二番煎じ」と
酷評されることも多いです。

そのため全二巻、援軍に来た新キャラすら
味方と言えない状態で終わっています。

しかし実はこの作品の果たした
役割はとても大きいのです。

・四千年の輪廻やギリシャ神話など
浮世離れした設定の多い車田漫画において
はじめて科学や近未来が持ち込まれる。

(正確にはリンかけ対ドイツJr戦で
物理学の公式が登場したり、

星矢でも「原子を砕く」「絶対零度
などの設定はありますが両者は
SFや近未来とは遠い存在です)

・90年代作品らしく環境問題に
警鐘を鳴らしている。

登場時は冷徹なキャラのアーサーが
このまま人類の好き勝手を許せば
あと40年で地球が壊れてしまうと
涙ながらに訴える台詞が出てきます。

・アニメ的な設定・演出が登場。

星矢もアニメ化後は影響を
受けた演出がありましたが
最初から設定に組み込まれているのは
この作品からです。

・瞬の系統の顔の涼が「面倒臭いな」と
戦いを渋ったり、小さな妖精の美少女など
今までの車田作品にはない性格・設定の
キャラが出てきたりと初の試みが
多数行われました。目の形も変わったし。

本作は「NEVER END」と2ページ見開きで
ラストを迎えたこともネタにされがちですが
上記は後の『B'T X』に活かされています。

二つの名作『星矢』から『B'T X』に至る
重要な中継地点と言える作品です。

「変身の際に自らプロテクターを生み出す」
「そのプロテクターは着脱後、脆く崩れる」
「生命力を相手に分け与える“チャージ”」
など心くすぐる設定も多数ありました。

捨てるのは惜しい設定なのにな……。

オゾン層破壊や石油の枯渇がもはや
懐かしい響きです。

SILENT KNIGHT 翔 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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