『もっこり半兵衛』(18~)は江戸時代の
江戸の街を月一両で夜回りし、人々を守るコブつき
脱藩浪人、月並半兵衛の活躍を描いた
コミカルなアクション人情時代劇漫画です。
『シェイプアップ乱』『ジャングルの王者
ターちゃん』『狂四郎2030』と
テンポ良く繰り出されるシリアスとエロと
ギャグ、秀逸なボケツッコミ、
そして人間の善性も闇も描ききる作風は
時代劇でも変わりません。
半兵衛は貧しい長屋に幼い娘さおりと
一緒に暮らしており、
彼が留守の間は隣人ののぞきばばあが
ホームセキュリティがわりです。
「もっこり半兵衛」の二つ名は
夜回り中にすれ違う吉原帰りの男たちが
半兵衛は夜鷹と毎晩会っている
=余程の女好きだと誤解したせい。
女好きなのは間違いないですが、半兵衛と
連日顔を合わせる夜鷹は年季の入った大ベテラン……
つまりババ様方です。
彼女たちは情報通なので、半兵衛に噂話や
他人の事情を伝える役割もあります。
「たまには私たちにもっこりしてもいいのよ」
「千両もらってもたたねーよ」
言いたい放題言ってますが、半兵衛は
どん底の境遇でも他人を傷つけない
彼女たちの生き方に敬意を払っています。
彼にはかつて藩主の命令で、御前試合の名目で
相手を斬り続け「人斬り半兵衛」と呼ばれ、
遂に脱藩した過去がありました。
遊女たちは「そんなおれを人間として
扱ってくれる」人達だったのです。
夜鷹だけでなく、陰間の乱丸や飴売り娘のお駒など、
蔑まれる立場の人もありのままに受け入れている
半兵衛、ひいては作者の優しい視点が
素晴らしい。
彼が夜回りをしている事情は、かつて徳川綱吉に
仕えた元大老・柳沢吉保を助けた際に
(警備の士官を断ったら)
「ならば、江戸の用心棒はどうじゃ」
吉保の死後も、屋敷から月一両と「用心」の
提灯と蝋燭が半兵衛に支給されています。
個人的に7話「伊助の武芸指南」が好きです。
くすっと笑えて時に泣ける、人情時代劇です。
ハッピーエンドよりほろ苦いオチが多いですが
それでも読後感爽やかな、味わい深い傑作です。