前作『共鳴せよ!私立轟高校図書委員会』でも
そうでしたが、脇にいくほどキャラが濃いのは
この方の作風なのでしょうか。
チコに仕える人たちは
弓も剣も達人の、武人タイプの頼もしい女房・
ショタ属性の長山(ながやま)さん、
兄が学者なのもあって外国(唐)かぶれの
男っぽい気性の乳母・仙河(せんかわ)さんと
どっちも強烈なのにお互いを変人呼ばわり。
二人とも風変りなチコをありのまま受け入れ、
大事に想っているのがいいですね。
長山さんがチコの身を守る方法として
立って走ることを教えました。
亨の父親は三位というエリート貴族。
妻と息子を溺愛していて、息子自慢を同僚に
畳みかけたり、
自宅で妻を芝居がかったノリで口説いたり。
(機嫌が良ければ妻も応じてくれる)
父があまりにも活力と自信に溢れているために
亨は今一つ自信が持てないのかも……
亨の友人で大学仲間、実興(さねおき)。
陽気なチャラ男で、真面目な亨とはいいコンビ。
お互いいい影響を与え合っています。
彼が十二単の袖だけを切り取った「手元女房」
なんてものを持っていたため、「秋風の君」は
女ということに。
大学の先生=文章(もんじょう)博士の
言道(げんどう)さんとの珍妙なやり取りも
いい味出していました。
他にも厳しくも優しい女官、典侍(ないしのすけ)や
能力は高いのに、怨霊退治シーンがしょぼい
陰陽師の大江さん、
後にチコが仕えることになる、マイペースな
内親王・識子(さとこ)と、
古参の女房で霊媒体質の高尾少納言など
個性の強い、魅力あるキャラが多数。
いつも人の心を見透かすようなことを言ってた
春雪さんが抱えていた本音を漏らし、
チコと亨に救われるシーンは本当に素晴らしい……。
台詞や設定などは現代風やパロディを
取り入れつつも、
しっかりとした時代考証がされており
平安知識に詳しくなります。
手紙が行方不明になることを「散る」と
いうのはこの作品で知りました。
平安時代に興味のある方、ほっこりしたい
方におススメです。