昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

青池保子『エル・アルコンー鷹ー』

『エル・アルコンー鷹ー』(77~)
16世紀末の英国を舞台に、
英国とスペインの混血の海軍将校、
ティリアン・パーシモンを
主人公にしたピカレスクロマンです。

07年に宝塚で舞台化しました。

短編『七つの海七つの空』
敵キャラとして初登場。

エロイカより愛をこめてでは
肖像画「紫を着る男」として登場。
少佐のご先祖様ですね。

第一話はティリアンが嵐の中、
最初の赴任先の船に乗り込んでくる
ところから始まります。

赴任早々、ティリアンは船長が海賊と
取り引きしていること、船長は泳げない
という弱みをあっさり握ってしまいます。

当然命を狙われますが、
船長のやり方に不満を持っている
下士官たちを言葉巧みに焚きつけます。

船長命令でマストの最上部に登らされ、
下りられず怯えている新入りの少年水夫・
ニコラスを「助けたいのでちょっとした
騒ぎを起こしてほしい」と。

救助作業兼高みの見物をしている間に
狙い通り船内で反乱が発生、

それをあっさり掌握して下士官たちと
ニコラスの絶対の忠誠を手に入れます。

口先一つで人を操る狡猾さ、
そして優しさを備えているのが伝わる
見事なエピソードです。

ティリアンはスペイン・英国両方の
名門貴族の血を引く貴公子で
家柄一つとっても出世は
約束されていました。

しかし彼の野望は
七つの海を制覇すること。

それも英国海軍ではなく
世界最強のスペイン海軍を
動かして……。

そのため彼はスペインと内通し、
スペインにとって邪魔な陸軍将校や
商家、海賊団を破滅させていきます。

彼に恋する海軍令嬢も
利用して捨てたり

実の父親かもしれない、亡き母の
元恋人を処刑したりと
相当にハードボイルドな話ですが

それでいて70年代の少女漫画らしい
華やかで優雅な美しさがあります。

 史実ではあと数年後には
スペイン海軍は英国に敗れます。

しかしこの当時には
最盛期の輝きがあったわけで、

読者は決して叶うことのない野望に
自分の人生を燃やすティリアンを
少し切ない目で見ながらも
強く引きつけられるのです。

エル・アルコンー鷹ー完全版

エル・アルコンー鷹ー完全版