昭和の頃、夏になるとりぼんやなかよしでは
必ずホラー漫画が載っていたものです。
人形が人を襲う話は結構多く、
個人的に一番怖かったのは
美内すずえ『妖鬼妃伝』(ようきひでん 80年)
登場するのは日本人形。
この作品における人形は、妖鬼妃とその一門が
魂を入れ、長い時を生きるための器です。
大型デパートの地下に本拠地があり、
(地下鉄怖い……夜のデパート怖い……)と
当時の小学生にトラウマを植え付けました。
印象深いのは山岸凉子『わたしの人形はよい人形』
(86年)人形は市松人形。
持ち主と共に棺に入れたはずの人形を
惜しくなって出してしまったせいで……。
詳しくは説明しませんが、
淡々とした作風の中で一瞬、躍動感のある
シーンが猛烈に怖い。
松本洋子の短編『人形たちの夜』
うろ覚えですが舞台は欧米。
人形はアンティークドール。
ある店で人形を買って以来、恋人の態度が
急に冷たくなる。
不審に思う主人公は人形を買った店を探る。
実は人形が魂を持ち、人間の体を
乗っ取っていたのだ。
「さあジャック きみの体(ボディ)だ」
結局主人公もジャックと呼ばれていた人形に
体を奪われ、店の中の人形の一体として
悲しげな顔を浮かべているバッドエンド。
『悪魔の花嫁』でもアンティークドールの
イヴォンヌや文楽人形のお初が魂を持ち、
恋した人間の男を地獄へ導いていました。
一条ゆかり『私が愛した天使』は
ちょっと変わり種。人形はアンティークドール。
主人公は妻を亡くし、娘のいる資産家と結婚。
天使のように可愛らしく無邪気な少女は
常に人形のアンジュを手放さない。
主人公は幸せな日々を送るはずが
誰かに命を狙われ続ける。
少女は愛してくれなかった実の母親を殺しており
「アンジュがやれって言ったの」と自分の悪意を
人形に投影していた。
ラストでは人形が燃やされたために少女は
幼児退行してしまうが……。オチは更に一捻り。
いろんなパターンがありますが、人形が魂や
意志を持つのは日本ならではの発想かも。