『ベルサイユのばら』(72~)は
マリー・アントワネットとフェルゼン、
貴族令嬢でもある男装の麗人オスカルを
中心に、革命前後のフランス史を描いた
少女漫画界の伝説とも言うべき大河ロマンです。
略称は「ベルばら」
74年には宝塚で舞台化し、以降定番になります。
79年にアニメ化しました。
荒木・姫野キャラデザで前半は13話までは
長浜忠男監督、以降は出崎統監督という
なんとも贅沢な組み合わせ。
1789年の7月14日がフランス革命勃発の
日なので記念に語ります。
基本的にはツヴァイクの伝記『悲しみの王妃』を
元にマリー・アントワネットの生涯を
なぞる形で描かれます。
アントワネットがオーストリアから輿入れ、
ルイ15世の寵姫デュ・バリー夫人との対立。
ルイ15世崩御でルイ16世誕生と共に王妃となる。
スウェーデン貴族フェルゼンとの恋、
ポリニャック夫人と共に賭け事や贅沢で
国民の顰蹙を買う。
ダイヤの首飾り事件、革命、ヴァレンヌ逃亡事件。
最期は断頭台の露と消える波乱万丈のエピソードは
『ベルばら』未読の人でもどこかで聞いた
ことがあるのでは?
そこにオスカルという要素が加わることで
単なる伝記漫画ではなく
美しく華やかなエンタメ作品として
昭和の乙女たちの心を掴んだと言えます。
アニメ版はオリジナル話も多数あり
第一話ではオスカルが近衛隊長になることを嫌がって
父ジャルジェ将軍と対立。
ジェローデルと隊長の座をかけて国王や貴族たちの
前で戦うはずが、勝手に決闘騒ぎを起こすなど
オスカルの葛藤や性格が掘り下げられます。
朝日の中、草原で殴り合うオスカルとアンドレ。
倒れたら本音を語る流れが実に70年代作品ですが、
これによって二人の関係性が強調されます。
当時、少女マンガにおいて史実を正確になぞった
歴史モノというのはベルばらが初の試みでした。
もしもこれほど大ヒットしていなかったら、
歴史漫画というジャンルは存在していたかどうか。
それを思うとベルばらの偉大さは
「伝説」でも言い足りませんね。