『へうげもの』(05~)は戦国~
江戸初期に実在した武将で、芸術家でも
あった古田織部を主人公とする
コミカルな語り口の歴史漫画です。
11年にはアニメ化しました。
芸術家と書きましたが、正確には
この時代では「数寄者」(すきもの)です。
序盤はまだ「古田左介」と名乗っており、
織田信長に使い番として仕えていました。
(織部の官名を貰うのはだいぶ後ですが、
ここでは織部で統一します)
第一話で松永久秀への交渉を命じられ、
「平グモの茶釜を俺に渡せば
裏切りを許す」という信長のメッセージを
伝えるため松永に面会します。
そんな大事な場で、平グモを目にした
感動で涙ぐんでしまい、
「聞け きさまぁ!!!」と
松永久秀に怒鳴られる有様。
結局史実通り平グモを抱き、松永久秀は
壮絶な爆死を遂げるのですが
飛んできた平グモのフタを懸命に
ダイビングキャッチして手を大やけど、
信長に爆笑されます。
(その後、フタはもらった)
武将として真面目に働く気は
ちゃんとあるのですが
好みの芸術品を前にすると数寄者としての
業を捨てきれず、日々葛藤しています。
(欲しいのはただ武功のみ……)と
心に誓った数ページ後に、
敵将・荒木村重を彼の抱えていた名品一つと
引き換えに逃がしてしまったり。
村重もまた強烈なキャラではありましたが……。
「ゲヒヒヒヒ」という笑い声の主人公も珍しく
秀吉の茶杓を偽物とすり替えたり
徳川家から皿をちょろまかすなど
俗っぽい一面もあれば
「数寄で天下を取る」と己の美学を
どこまでも追及したりと
芸術家としての一面もあり、
主君や友への情や愛妻・おせんとの
微笑ましい夫婦愛を見せる
多面的で人間くさい人物です。
比喩表現も独特で
「こ……このゴバアッとした強大さ……
まるで海に浮かぶ竜宮城ではないか……」
千利休の狭い茶室に無限の宇宙のイメージを見るなど
「芸術に感動する」のはマンガでは結構難しい
表現だと思いますが、織部視点で
わかりやすく解説してくれる作品でもあります。
続きます。