大雑把なあらすじは、若い女性を
氷漬けにする連続殺人が発生。
犯行現場を意味ありげに眺める女、
歌手の高木京子を三沢が追う。
遺体から放射線が検出されていたため
牧は研究者を訪ね、現在行方不明の
吉野という科学者が捜査線上に浮かぶ。
吉野は妹・京子の白血病を治すため「スペクトル
G線」発生装置を人体実験していた……。
『怪奇』の中でも秀逸な回です。実相時監督回だし。
歌の歌詞に合わせた見立て殺人という
古典的なミステリー要素+
人間を一瞬で氷漬けにする装置という
超科学なのがこの作品らしい。
キーワードになる歌は彼女の持ち歌で
マザーグースが元ネタです。
「♪10人の娘が旅をした
滝にうたれて一人目が死んだ
9人の娘が旅をした
橋から落ちて二人目が死んだ……」
初めて観た時は(こんな辛気臭い歌が
売れてるだと……!?)と思いました。
実は60~70年代、暗い流行歌が結構あると
知ったのはだいぶ後です。
なおこの音源は失われたそうで、サントラにも
収録されていません。もったいない!!
この回の最大の萌えどころは、
牧さんが「吉野くん、話し合おう」と
おっかなびっくり話してる場面です。
妹を救いたいという気持ちはわかるし
科学者同士分かり合えるに違いない、
と思ってはいても
相手は強力な殺人兵器を持っているので
腰がひけてる姿が妙に可愛い。
吉野が警官隊に追いかけ回される場面が
やけに長いのは、当時の学生運動を
重ねているからだそうです。
妹の白血病も広島での体内被曝が原因
だったりと、社会問題も織り込まれています。
吉野が逮捕され、見送る牧さんの悲しげな表情もいい。
なお吉野役の草野大悟さんと、牧さんこと
岸田森さんは同じ劇団出身。
71年の『鬼平犯科帳』第二期
4、5話(前後編)『狐火』で、殺し合う
盗賊の異母兄弟を演じたり
71年公開の実相時監督の映画
『曼陀羅』で岸田さんがカルト思想集団の指導者役、
草野さんがその部下です。
エロスとカオスとシュールの三位一体に
頭がおかしくなりそうな映画です(大絶賛)