昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

吉田秋生『海街Diary』その2

海街Diaryは四姉妹だけでなく、
他のキャラのエピソードも素晴らしい。

すずと同じサッカーチームに所属するエースの
多田くんが、足を腫瘍のため切断することになります。

動揺するチームメイトたちや、しっかりしている
ようで一度は行き場もなくさまよう多田くんの心情。

※この時の多田くんとスポーツショップの店長との
やりとりが、後に店長&三女の千佳サイドの
伏線にもなっている。

モテるタイプの子だったので、ファンの子が
派手に可哀想がって、すずがムっとしたり。

こういうハードな出来事から、

サッカーチームは男女混合のため、中学生とも
なると女子はどうしても当たり負けします。

落ち込むすずを励ますキャプテンの風太との
淡い恋模様など

誰にでもあるような微笑ましいエピソードまで
バランスよく織り込まれています。

 次女・佳乃が付き合っていた
藤井朋章が風太兄と交流があったり、

サッカーチームの監督が長女の幸と恋愛フラグが
立ったりと、小さい街ならではの
人の繋がりもリアリティがあります。

佳乃が担当する顧客の一人で、
茶店「山猫亭」の気難しそうな店主の福田さんも

訳ありっぽいのは最初から出ていましたが
まさかあんな重たい事情とは……。

「山猫亭」名物のしらすトーストから、
すずが両親のことを思い出す場面があります。

この作品は「しらすトースト」や
香田家の「ちくわカレー」など、

何気ない食べ物が年月を重ねて思い出になっている
描かれ方が本当に巧みです。

後にスポーツショップの店長がヒマラヤに
登っている際に遭難の報せがあり、
無事だったことが判明した際の

安心したすずの母方の従兄・直人が
おにぎりを食べながら

「あーウマ 腹が減ってめしが食えるって
すげーことだ

幸せってコレでいいんだよな。
生きてるってそれだけで超ラッキーだ」

と言うのは、淡々としていながらわりと
ヘビーな展開も多い作品なだけに、
本当に沁みるシーンです。

読み込むほど、また年を経て読み返すたびに
新たな感動がある名作だと思います。

 

海街diary すずちゃんの海街レシピ (フラワーコミックス)

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