昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

佐伯かよの『燁姫』(あきひ)

『燁姫』(84年~)は女子高生にして
銀座の画廊のオーナー・瀬名生燁姫
(せのお あきひ)を主人公に

絵画にまつわるミステリーや人間ドラマを
描くお話です。

普段は「いるかいないかもわからない」なんて
言われている地味な女子高生が

学校を一歩出たら運転手つきのお屋敷に住んで
「お帰りなさいませ燁姫さま」と使用人一同が
玄関で頭を下げ

二つ結びの髪をほどいてメガネを外して
凛々しく美しい大人の女性に変身!

理解者である、資産家で有能な優しい婚約者に

最初は軽薄な当て馬かと思いきや、情熱的で
何かと手助けしてくれる新たな婚約者候補
(こちらも資産家で有能)

贋作を作らされていたところを燁姫が
助け出した天才少年など

魅力的な男性キャラに囲まれ……と

実に昭和の乙女の夢が詰まっております。

ただしその夢を今なお読み応えのある
名作にしているのは、美術に関するリアリティと
愛憎と欲望渦巻く人間の描き方。

いわば「土台」がしっかりしているからこそ
ありえない夢を美しく咲き誇らせているのです。

なお彼女が高校生で画商をしているのは、
無名の画家だった父親の失われた絵を
探すためで

絵が見つかれば話が終わるので、当然ながら
なかなか見つかりません。

ラストは某国の革命の最中に、独裁者の屋敷から
美術品をエキスパートたちが保護するという
映画のようなエピソードでした。

「20代……30代……
いやあのおちつきは40代とも見える
若いのかそうじゃないのか全くつかめんな」
と年齢不詳の設定の燁姫ですが

リアルだとそういう人ってオバサン顔……(禁句)

また美術にまつわるドラマを描いたマンガには
細野不二彦ギャラリーフェイクがありますが
こちらは国際情勢や人間の欲望など
大人の、それも男性読者を想定しての話が多く

『燁姫』は少女マンガらしく、作中のドラマは
恋愛・愛憎絡みが多いですね。

また『燁姫』がバブル期以前、『ギャラリー~』が
バブル崩壊後という時代設定なので
絵画の扱いを読み比べるのも面白いと思います。

あき姫 1巻

あき姫 1巻