『日出処天子』に登場する魅力的なキャラは
王子や毛人・刀自古以外にも沢山いて、
王子に仕える渡来人、淡水と調子麻呂は
腕っぷしも強く、頼れるキャラクターとして
描かれました。
淡水の方は王子のためなら非道な手段も使うタイプ。
調子麻呂は優しく誠実で、尼さんとのほのかな恋の
エピソードもありました。
後に登場する、無邪気で器用な工人の少年・
トリも含めて、和やかな雰囲気の時もあったのです。
過去形なのが切ない……。
「もし、もう少しだけ○○だったら」が
多すぎて辛いのですが、山岸作品は容赦なく
キャラクターを突き落としていくのが特徴です。
もう少しだけ、母・間人媛が王子に優しかったなら、
王子が似たもの同士の刀自古に心を開いてくれていれば……
毛人が王子を受け入れてくれていたら……
せめてあの布都姫を殺害しようとした
決定的な瞬間を毛人に見られずにすんでいたら……。
(ああ……)と読者が膝から崩れ落ちて
しまうような出来事が作中には多々あります。
しかし一度読みだすと止まらず、最後まで
目が離せません。
王子が最終的に傍に置いたのは誰なのか、
その死後の一族の終焉までがドライな視点で
淡々と、しかし張りつめた美しさで描かれます。
最終エピソードである『馬屋古女王』
(うまやこのひめみこ)には
刀自古の産んだ山背大兄王子(やましろの
おおえのおうじ)と
末の姫・馬屋古や王子の他の子供たち、
毛人と布都姫の息子・入鹿(いるか)が
登場します。
高貴な血筋に生まれ、誰よりも聡明で
人を越えた力を持った美貌の王子の
本当の望みは……。
最終巻まで辿り着いた人はこちらも必見です。
蘇我馬子や額田部女王(ぬかたべのひめみこ
=推古天皇)など、日本史でおなじみの
人物も人間味のあるキャラクターとして描かれて
います。
何かと名前が長く、婚姻関係がややこしい
古代日本史をわかりやすく頭に入れることも、
毛人を巡る恋物語として読むこともできますので
機会があればぜひ!!
少女マンガ史に残る傑作と名高い作品です。
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