昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

山岸凉子『日出処天子』その2

『日出処天子』に登場する魅力的なキャラは
王子や毛人・刀自古以外にも沢山いて、

王子に仕える渡来人、淡水と調子麻呂は
腕っぷしも強く、頼れるキャラクターとして
描かれました。

淡水の方は王子のためなら非道な手段も使うタイプ。

調子麻呂は優しく誠実で、尼さんとのほのかな恋の
エピソードもありました。

後に登場する、無邪気で器用な工人の少年・
トリも含めて、和やかな雰囲気の時もあったのです。

過去形なのが切ない……。

「もし、もう少しだけ○○だったら」が
多すぎて辛いのですが、山岸作品は容赦なく
キャラクターを突き落としていくのが特徴です。

もう少しだけ、母・間人媛が王子に優しかったなら、
王子が似たもの同士の刀自古に心を開いてくれていれば……
毛人が王子を受け入れてくれていたら……

せめてあの布都姫を殺害しようとした
決定的な瞬間を毛人に見られずにすんでいたら……。

(ああ……)と読者が膝から崩れ落ちて
しまうような出来事が作中には多々あります。

しかし一度読みだすと止まらず、最後まで
目が離せません。

王子が最終的に傍に置いたのは誰なのか、
その死後の一族の終焉までがドライな視点で
淡々と、しかし張りつめた美しさで描かれます。

最終エピソードである『馬屋古女王』
(うまやこのひめみこ)には
刀自古の産んだ山背大兄王子(やましろ
おおえのおうじ)と

末の姫・馬屋古や王子の他の子供たち、

毛人と布都姫の息子・入鹿(いるか)が
登場します。

高貴な血筋に生まれ、誰よりも聡明で
人を越えた力を持った美貌の王子の
本当の望みは……。

最終巻まで辿り着いた人はこちらも必見です。

 

蘇我馬子や額田部女王(ぬかたべのひめみこ
推古天皇)など、日本史でおなじみの
人物も人間味のあるキャラクターとして描かれて
います。

何かと名前が長く、婚姻関係がややこしい
古代日本史をわかりやすく頭に入れることも、

毛人を巡る恋物語として読むこともできますので
機会があればぜひ!!

少女マンガ史に残る傑作と名高い作品です。

 

 

山岸凉子『日出処の天子』古代飛鳥への旅 (別冊太陽 太陽の地図帖)

山岸凉子『日出処の天子』古代飛鳥への旅 (別冊太陽 太陽の地図帖)