昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

山岸凉子『日出処天子』その1

『日出処天子』(80~)飛鳥時代を舞台に
聖徳太子こと厩戸王子が超能力者で、蘇我毛人に
恋していたという前代未聞の設定で繰り広げられる
史実をベースにした物語です。

※「ひ いづるところのてんし」と読みます。
通称は「ところてん」

80年代に聖徳太子といえば一万円札のヒゲのおじさんでした。

それが「妖しい魅力の美少年(後に美青年)で
超能力者」

しかも男である蘇我毛人(そがの えみし、
蝦夷とも書く)に想いを寄せるという……。

何をどうしたらそんなこと思いつくの!?

序盤、大豪族の蘇我の跡取りながら、おっとりした少年の毛人は
ある日池で水浴びをしている美少女に心を奪われますが
実は厩戸王子でした。

王子は毛人の記憶を消したつもりが消えておらず、
そのことから毛人に興味を持ち、やがて魅かれて
いきます。

しかし、毛人は蘇我氏が滅ぼした物部(もののべ)
一族の女性、布都姫(ふつひめ)と恋に落ちてしまうのでした……。

これにより、毛人の妹で彼を愛する刀自子(とじこ)と
王子が嫉妬のあまり色々やらかすことになります。

 

王子が毛人を好きになった最大の理由は
「人と異なる力を持つ自分をありのまま
受け入れてくれた」からでしょう。

母親は王子を恐れ、避けていました。

誰よりも賢く、人知を超えた力を持ちながらも
孤独な王子の姿が何度となく描かれるので

優しい毛人の気遣いは王子の救いなのが痛々しいほど
伝わります。

また、刀自子はかつては快活な娘でしたが
物部の男たちに酷い目に遭わされて以降、

表情は昏い影を帯び、兄の毛人しか愛せなくなります。

読者はこの二人に感情移入していたため
布都姫は当時、相当嫌われました。

王子は自ら変装して幾度となく毛人から布都姫を
遠ざけようとし、泊瀬部大王(はつせべのおおきみ)に
献上されるように仕向けたり毒殺を図ったりします。

しかし泊瀬部大王殺害、ついでに布都姫を殺そうとした
決定的瞬間を毛人に見られてしまうのでした……。

次回に続きます。