昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

大和和紀『イシュタルの娘ー小野於通伝ー』その2

『イシュタルの娘』物語の最大の核は、
於通と近衛信伊(このえ のぶただ)の
恋物語です。

※信基→信輔→信伊と名前が変わります。

少年時代を織田信長の元で、
その小姓たちと共に過ごしたため

意外とケンカも剣の腕も達者で、
後に当時流行のかぶき者になったりと
公家の若君とは思えぬ設定のお方。

しかし書道家としては於通同様、
今なお有名な書を残す文化人でも
あります。

秀吉に関白の座を奪われてしまい、
「だったら武士になってやる」とばかりに
朝鮮出兵に参加しようとたため
怒られて薩摩に流刑にされます。

(ここまで全部史実)

於通とは身分違いの恋で、一度は諦めたものの
真田兄弟の応援もあり、信伊の流刑を
きっかけに結ばれます。

娘の於図(おつう)も生まれ
信伊と幸せな日々を過ごす……
には時代が許しませんでした。

秀吉の暴君化や死をきっかけに、
血なまぐさい事件や戦が次々に起こります。

千利休豊臣秀次、秀吉、細川ガラシャ
石田三成、大谷刑部、淀の方、真田幸村
その命を散らし、

関白として朝廷と幕府の間で苦悩した信伊も
早すぎる死を迎え

もう少し後には高台院(於ね)、
お江与の方、出雲の阿国も亡くなります。

16巻のラストで、於通が絵を描きながら
亡くなった人々に思いをはせるのですが

幸村「おれは……おれらしく生きた……!」
淀の方「わたしは自分が思うままに生きた……!」

たった一コマであっても、それだけで
彼ら、彼女たちのエピソードが鮮やかに
脳裏に蘇り涙がこみ上げます。

それだけ於通の味方だった人も、敵対した人も、
皆それぞれに信念や美学を貫いた
見事な生き様が描かれていたということです。

序盤から父を失った少女として登場し、
於通に憧れ、後に対立することになった
おふく(=春日局)も
裏主人公のような立ち位置でした。

最後にぬばたまの正体が明かされますが、
あれには驚きました(ここでは言いません)

もっと評価されてもいい、
隠れた名作だと思います。

イシュタルの娘~小野於通伝~(16) (BE LOVE KC)

イシュタルの娘~小野於通伝~(16) (BE LOVE KC)