百人一首の句をもとにした、
かなり創作成分を含んだ物語です。
コミカルな話から悲恋の物語まで、内容は色々。
2012年にはアニメ化もされました。
百人一首は教科書にも載っているし、
授業で習うこともありますが
先生や教科書の説明だけでは
すぐに頭をすり抜けてしまいます。
しかし物語になったことで、藤原定家、小野小町、
在原業平、文屋康秀、紀貫之に清少納言、紫式部と
「名前だけは聞いたことがある」歌人たちが
現代人と同じように人間関係や恋愛の
悩みを抱えていたと知ることで、
どれほど身近な愛おしい存在に見えてくるか。
あと意外と百人一首の歌人たちは
血縁関係が多いのがわかります。
清少納言の父、清原元輔の歌
「ちぎりきな かたみにそでをしぼりつつ
末の松山 波こさじとは」
これは兄の失恋をもとに父が読んだ、ということに
なってますが実際のところはわかりません。
しかし、そう描かれたことによって
より深く心に届くようになっています。
小野小町の物語もあり、在原業平と
文屋康秀の3人で仲良くわちゃわちゃしてるのは
百人一首に選ばれている彼女の歌
「花の色は 移りにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに」が
悲しげだったからこそ、余計に微笑ましくなり
彼女の人生がこんな風に楽しいことが多かったら……と
願わずにはいられません。
清少納言も藤原行成と仲良しですが、彼女が仕えた
中宮定子の没落を知っていると
「楽しいこと」だけを『枕草子』に記したのだと
笑顔で語る彼女を前に泣けてきますし、
それを知った上で読む枕草子は特別なものになります。
『シュトヘル』を読んだ時も思いましたが、
千年も前に書かれたものが、同じ言語のまま
同じ国の人間に伝えられるというのはどれほど
素晴らしいことか。
そんなわけで、5巻をいつまでもお待ちしています……。
なお、セルフパロの『うた変。』も面白いですよ。