昭和の話がしたいんだ

昭和大好き団塊ジュニアの主に70~80年代漫画・アニメ・特撮語り

伊藤悠『シュトヘル』

シュトヘル(09~)は現代の高校生男子
須藤がある日「鈴木さん」という女子高生と
出会ったことから意識が過去に戻り、

モンゴル軍によって処刑された西夏の女兵士
シュトヘル」(=亡霊)として

西夏文字を後世に伝える玉の文字盤「玉音同」を
護ろうとする少年・ユルールと共に戦う
壮大な歴史ファンタジーです。

今時のラノベの「異世界転生で無双」モノと
言えないこともないですが

シュトヘルは無敵の女戦士とはいえ、
何度も何度も死にかけ、酷い目に遭います。

シュトヘルは彼女独自の意識があり、
たまに須藤の人格が出ることはあっても
基本別人です)

もう一人の主人公の少年、ユルールは
ツォグ族という遊牧民の長の次男として
育てられますが

長の妻はチンギス・ハーン
一時奪われていたので
父親はそちらだとみなされていました。

(ユルールの生母は自害したため
異母兄ハラバルの母親の西夏族の女性が
ユルールを育て、文字を教えた)

ハラバルはモンゴル軍と共に
シュトヘルのいた部隊を皆殺しにして
仇として狙われます。

ユルールとの出会いも、彼と共にいれば
異母兄が現れるはずと考えたからです。

しかしユルールによって、文字を教わった
シュトヘルの心が少しずつ変化していきます。

モンゴル側も、次代のハーンとなるトルイと
その双子の兄ナラン、

チンギス・ハーンの側近兼愛人の
金髪の美女ヴェロニカなどの思惑が絡み
全く先が読めません。

そして圧倒的恐怖として描かれる
チンギス・ハーンが何故、

玉音同にこだわり、西夏文字
執拗に滅ぼそうとするのか……。

南宋やモンゴルが舞台のマンガは
結構ありますが、西夏が出てくる
作品は珍しい。

また序盤に出てくるアラブ系の商人・
アルファルドの言葉から
十字軍の影響がわかります。

歴史好きな人、または人間ドラマや
アクションが好きな人には
おすすめしたい名作です。

この作品を読むと「文字を次世代に伝えること」
「誰もが自国の言葉で文字を綴れること」
の大切さがよく伝わってきます。