『究極超人あ~る』(85年連載開始)は
大雑把に言うと私立春風高校を舞台に
アンドロイドの転入生R・田中一郎と、
光画部(=写真部)を中心に繰り広げられる
ゆるい部活ものです。
今でこそ、文系の部活の日常モノは多いですが
当時のマンガで大会も目指さず、恋愛もせず、
趣味に忠実にまったり過ごすだけの話は
とても画期的なことでした。
(生徒会が光画部潰しを画策したり、
成原博士が世界征服目指して大暴れしたりと
非日常展開もあります)
同時期のジャンプでは
『ドラゴンボール』『聖闘士星矢』
『キン肉マン』『北斗の拳』『男塾』
『JOJO』など熱いバトルだらけ。
学校での男子の話題もジャンプの
話題一色で、私もそれに加わっていました。
そんな日々の中だと、より
『あ~る』は不思議な作品に
感じられました。
※サンデー作品なのでジャンプと
温度が違うのは当然ですが。
とぼけた性格のアンドロイド、
あ~るくんと
常に戦いと混乱を求める鳥坂センパイを
はじめとする周囲の個性的なキャラの
愉快なやり取りは
当時中学生で、全員部活制という
やりたくもない体育会系の
部活を連日強制されていた私に、
「高校生になればこんなふうに
仲間と楽しく部活できるんだ」
という憧れを植えつけました。
実際のところは、高校で部活の合宿旅行
だの、OBがしょっちゅうやって来るなんて
ありえないわけですが、
仲間とまったり楽しく文系の部活をする、
という望みだけはかないました。
この作品の影響でわざわざ「~でせう」とか
古風の言い回しを口にしたり書いたりした
人も多いはず。
あとやらないように本編中に注意書きが
あるにも関わらず、
散々中指立てるポーズをマネした後で、
意味がわかった人とか。
新刊では常に着ぐるみ状態のOBたちの
中身が明らかになったり、
あ~るくんの「やあ」の手つきを見た野明が
イングラムに再現させるなど、ファンには
たまらない一冊となっております。
当時出ていたOVAやCDに収録されている
山本正之の曲も実に名曲揃い。
この機会に復刻してくれないかなー。
故・塩沢兼人さんの歌う
『ぼくはアンドロイド』は
いつ聴いても涙腺が壊れます……。